2019 Fiscal Year Annual Research Report
HFpEFを伴う肺高血圧におけるRho-kinaseの役割を探る
Project/Area Number |
18K15871
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
金 慧玲 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (60809820)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HFpEF / 肺高血圧 / Rho-kinase / 放射光微小血管造影法 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺高血圧を合併するHeart failure with preserved ejection fraction (HFpEF)は糖尿病患者において多く見られ,高い罹患率と死亡率を伴う.その原因の一つとして,酸化ストレスの亢進によるNO-cGMP-PKG系の障害が示唆されている.過剰なRhoA/Rho-kinase (Rock)の活性化は酸化ストレスと心血管疾患の原因となり,当研究室の研究により高血圧性糖尿病ラットでは,Rock阻害剤が内皮機能と心機能を改善することが報告されていた.本申請では,肺高血圧と糖尿病を合併するHFpEFにおける,心・肺循環のRhoA/Rockを介した作用機序を解明することを目指した.昨年度は糖尿病モデルGoto-Kakizaki(GK)ラットとWistarラットを用いて肺高血圧(Sugen/Hypoxia) モデルを作成し,心不全に至るまでの心・肺循環機能を,SPring-8高輝度放射光により評価した.その結果,Wistarラットと比べてGKラットでより重度な内皮機能障害が生じていた.急性Fasudil(Rock阻害剤)投与では,内皮機能が改善する傾向が見られた.PV-Loop・マッソン・EVG染色などの結果から,GKラットでは肺高血圧症の早期で右心室障害が生じており,肺において50μm以下の閉塞血管が多いことが観察された. 今年度は,Fasudilの慢性投与により,肺血管内皮機能の改善が見られ,右心室組織においてeNOSのリン酸化(ser1177)が有意に上昇していたことから,心臓においてNO産生が亢進したことが示唆された.しかしながら,これまでの報告とは違い,Fasudilの肺動脈圧を低下させる治療効果は見られなかったため,肺高血圧と糖尿病を合併するモデルにおいてRhoA/Rockを介した作用機序は更に複雑であり,引き続き検討する必要がある.
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