2021 Fiscal Year Research-status Report
Mtus1遺伝子による 心肥大抑制機構の解明とその臨床応用
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18K15873
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
伊藤 慎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 室長 (20796560)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心肥大 / 心不全 / 遺伝子変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. Mtus1バリアントの発現制御解析 我々の研究により、マウス圧負荷心不全モデルや、Angiotensin IIおよびPhenylephrine負荷心肥大モデルを用いた実験で、Mtus1のvariantであるMtus1Aが心肥大期より増加することがわかった。Mtus1の発現制御を解明するため、心肥大の転写因子として知られているc-Mycを仔ラット心筋細胞に強制発現させたところ、Mtus1Aの発現増加がみられた。しかし、ChIPアッセイではその結合を示すことはできなかった。また、GATA2、CTCF、MEF2についてもChIPアッセイなどで、その結合は示せなかった。 2. ヒト心筋症サンプルを用いたMtus1蛋白の発現解析 アデノウイルスベクターを用いて、MTUS1のバリアントを仔ラット心筋細胞に強制発現させ免疫染色を行ったところ、Mtus1Aはミトコンドリア、Mtus1Bは核膜、Mtus1Cは微小管と、局在が異なることを明らかにした。心肥大モデルマウスを用いた組織学的検討では、血管平滑筋、内膜、線維巣ではMtus1の発現は見られず、心臓においては心筋細胞特異的に発現していることを明らかにした。また、ヒト心臓組織を用いた免疫染色では、肥大型心筋症においてMtus1の心筋発現が増加しており、Mtus1の発現は心肥大の程度と関与することがわかった。 3. Mtus1遺伝子の変異解析 国立循環器病研究センターにて補助人工心臓や心臓移植を行った心不全患者、剖検症例を対象とし、遺伝子解析を行っている。倫理委員会に計画書を申請し承認を受けた後、重症心不全患者144例と対象症例16例から得られた試料を用いて、順次遺伝子解析を行っている。また、新規症例についても同意取得を行ない、検体を取得している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1. Mtus1バリアントの発現制御解析 Mtus1のsplicingに関与する転写因子の同定を行っており、本年後は、CTCF、MEF-2について検討したが、ChIPアッセイで結合を示すことはできなかった。 2. ヒト心筋症サンプルを用いたMtus1の発現解析 我々が作製したMtus1抗体および市販のmonoclonal抗体を用いて、ヒト心筋組織においてもMtus1の心筋細胞での発現と、肥大型心筋症での発現増加が確認できた。 3. Mtus1遺伝子の変異解析 本年度も、拡張型心筋症の補助人工心臓や心臓移植を行った心不全患者、剖検症例を対象とし、症例登録と遺伝子解析を行っている。現在、対象者の血液より抽出されたDNAを用いて、エクソーム解析・全ゲノムシークエンスを進めているが、進捗は遅れており、次年度遺伝子変異の同定を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、心不全患者、剖検症例の遺伝子解析を完了し、得られたシークエンスデータからMtus1遺伝子の変異の有無を確認する。、Mtus1の遺伝子変異を同定した際は、新生児仔ラット培養心筋細胞を用いた機能解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前年度はこれまでに購入した物品を使用して研究を行ったため支出が生じなかったが、本年度は遺伝子解析に伴う支出が生じ、すべて消費予定である。
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