2018 Fiscal Year Research-status Report
先天性心疾患に伴う肺血管、右室リモデリングの病態進展における炎症シグナルの役割
Project/Area Number |
18K15880
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相馬 桂 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (90755696)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 成人先生心疾患 / 肺血管リモデリング / 低酸素 / 肺高血圧 / マクロファージ / 右心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
診断技術ならびに心臓外科手術の進歩により多くの成人先天性心疾患患者の予後が改善してきたにも関わらず、右室機能不全や肺高血圧症を合併したACHD患者の予後は依然として悪いことが知られている。シャント性心疾患における肺血流増加は著しい肺血管・右室リモデリングを引き起こすが、これまでその病態機構は明らかにされて来なかった。我々は肺血流量増加と低酸素血症を合併するマウス病態モデルを構築しこのモデルを用いた解析を行った。マウスの左肺を切除した後、8.5%酸素下での低酸素飼育を行うことにより、著しい肺血管リモデリングを呈するモデル(シャント性心疾患モデル)である。このモデルは低酸素ストレスと定量性を持った右肺動脈血流増加を背景とした、臨床上のシャント性心疾患の病態を反映した病態モデルと考えられる。このマウスモデルを用いて、肺血管周囲に浸潤するマクロファージをフローサイトメトリーを用いて経時的に解析した。特に血管平滑筋細胞の増殖期に集積するマクロファージに着目したところ、間質のM2マクロファージの早期浸潤が血管平滑筋増殖に関わること、間質マクロファージの除去により肺血管リモデリングが明らかとなった。続いて細胞集団特異的なLoss of function approachによりこのマクロファージ亜集団のシャント性心疾患モデルにおける機能的役割を検証している。本研究では、低酸素ストレスによる炎症細胞浸潤がシャント性疾患において肺血管リモデリングを増悪させる機構の解析を通じて、炎症制御、マクロファージのM1/M2機能制御というアプローチを新たな治療法開発の一助とすることを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構築したシャント性心疾患モデル、および低酸素飼育のみ施行したマウス(低酸素単独)、右室圧負荷モデルマウス(肺動脈絞扼術後マウス)を用いて、肺血管周囲および右室に浸潤するM1/M2マクロファージをフローサイトメトリーを用いて経時的に解析した。その結果、シャント性心疾患モデルマウスにおいて低酸素+High flowの負荷後早期にM2マクロファージの浸潤が一過性に増加することが明らかになった。M1マクロファージや肺胞マクロファージの浸潤増加は認めなかった。また、クロドロネートリポソーム静脈注射することにより間質のマクロファージ除去を行うと肺血管リモデリングが抑制されるという結果を得た。ただし、クロドロネートリポソーム静脈注射では間質のM1,M2マクロファージともに除去されることから、M2マクロファージ特異的な役割を明らかにするために、現在、マクロファージ特異的なM2機能欠損マウス(Lysm-HIF2αマウス)を用いたモデルマウス作成、phenotypeの評価、M1/M2マクロファージの挙動の解析を行っている。一方、本研究実施を通じて、M2マクロファージ増加のタイミングで肺血管周囲への好酸球浸潤が増加するという新しい事 実をも認めており、M2マクロファージ集積の上流因子として肺血管リモデリングにおける好酸球の役割にも注目している。好酸球ノックアウトマウスであるGATAマウスおよびM2機能が欠失したSTAT6ノックアウトマウスを用いて解析を行っている。 重要な細胞亜集団を同定し、そのノックアウトマウスの作成も終了しているためおおむね順調に進展しているとの認識である。
|
Strategy for Future Research Activity |
RNAシークエンスを用いて網羅的解析を行い、以下の3つの条件を同時に満たす因子の絞りこみを行うことにより、M2マクロファージ由来の肺血管・右室リモデリング促進因子を同定する。①病態モデルの肺血管、心筋組織に集積するM2マクロファージにおいてレジデントマクロファージに比して発現が上昇する(RNAシークエンス法)、②低酸素環境下においてHIF-2α依存的に発現が誘導される(RNAシークエンス法)、③血管平滑筋細胞、線維芽細胞との共培養の系で活性化作用を持つ。
|
Causes of Carryover |
(理由)既存の試薬を使用して実験が可能だったため。また、予定よりも少数のマウス個体でphenotypeがでたためマウスの飼育維持にかかる費用が節約できたため。また、海外学会の発表をおこなったが招待講演であり旅費が発生しなかったため。 (使用計画) 主にノックアウトマウス実験を行っているため、マウスの飼育、維持に使用する。また、RNAシークエンスによる標的しぼりこみを予定しているためこれら薬剤の購入や解析費用に使用する。また論文執筆、学会発表を行う。
|