2018 Fiscal Year Research-status Report
重症虚血肢に対する脂肪幹細胞移植と血管内治療のハイブリッド治療の確立
Project/Area Number |
18K15885
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
海老澤 聡一朗 信州大学, 医学部附属病院, 講師(特定雇用) (50645439)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重症虚血肢 / 再生医療 / 事務手続き中 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症虚血肢は動脈硬化性疾患の終末期像ともいえる病態で難治性且つ再発率が高い。我が国でも年間3,000人以上の重症虚血肢患者が下肢の切断を受けており、今後さらに増加することが推測される。従来の治療法は、血管内治療やバイパス手術による血行再建術に加え外科的に壊死組織の切除・洗浄を行い組織の再生を促す方法のみであった。しかし、こういった治療では下肢切断後の予後は5年生存率が40~60%と非常に低く、切断後の長期入院やリハビリテーション、福祉に対するニーズ増大をもたらし、重大な経済的負担となる。 本研究の目的は重症虚血肢に対する、血管内治療と脂肪組織由来幹細胞による血管新生療法のハイブリッド治療法の開発である。一般に血管内治療の成績は標的血管の血管床が影響し、血流のrun offが不良だと開存率は低い。一方、血管新生療法は微小血管を増加させるがそこに流入する血液が乏しければ容易に閉塞してしまうことが考えられる。血管内治療と血管新生療法のハイブリッド治療では、血管新生で血管床を増加させて血管内治療で上流からの微小循環への血液の流入を確保することが期待できる。このように両者のハイブリッド治療は高い補完性があり、同時に行うことで相乗効果を生むと考えられる。 対象は、25 歳以上80 歳未満のRutherhord 分類Ⅳ~Ⅵ 度の末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)の患者。標準的治療によっても四肢切断が回避できない重症虚血肢患者のうち、循環器内科医、心臓血管外科医、形成外科医、血液内科医で構成される検討委員会で脂肪組織由来幹細胞移植の適応と判断され、インフォームド・コンセントが得られた患者に対し、本治療を実施する。平成30年度の実績は再生医療新法のために、脂肪幹細胞移植のために再度手続きが必要な状態であり現在進めている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は難治性で壊死を伴う重症虚血肢に対する脂肪幹細胞移植と血管内治療(経皮的血管形成術)のハイブリッド療法の効果と安全性を評価する研究である。 登録候補となる患者は増えており、平成30年度の重症虚血肢患者入院患者は20名を超えており、内12例がエントリー基準を満たしていた。しかし、再生医療新法のために現在当院では脂肪幹細胞移植は施行できない状態であり現在書類提出中である。また、一例血管内治療や形成外科創処置でも創が治癒せず治療に行き詰った症例があった。しかしながら上記問題により脂肪幹細胞移植が行えず、患者は全身状態の悪化により死亡した。こういった症例を救肢救命するために本研究を提案した次第である。 旧法律の時点ではすでに脂肪幹細胞移植は施行経験があるので、審査が通過した段階で速やかに症例登録が行える状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、再生医療新法に基づいた手続きを行っておりこれが完了になり次第患者のリクルートを行う。 幸いにも近隣の透析クリニックや重症下肢虚血に触れる機会のある医師(整形外科・皮膚科・糖尿病内科)の理解の向上から平成30年度の重症下肢虚血患者の入院数は最大であった。疾患の性質から重症化や患者の認知機能の低下があることもありインフォームドコンセントに至らない症例もあるが、治療決定を行うだけの認知機能を有していて従来の診療では創が改善せず数か月も入院している症状も多い。こういった患者は新治療の可能性を渇望しておりインフォームドコンセントは可能であると考える。こういった症例をリクルートしていく予定である。見通しとしては年3例は症例登録が可能であり研究期間内に目標の5例の登録が見込まれる。
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Causes of Carryover |
本年は新再生医療法に伴い、実際に患者を登録し治療することが出来なかった。よって活動内容を発表する機会がなくこういった支出がなかった。よって次年度使用額が生じた。 次年度使用額は平成31年度請求額と合わせて研究成果の発表費用に使用する予定である。
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