2018 Fiscal Year Research-status Report
Correlation between micro RNAs on HDL and prognosis in patients with coronary artery disease
Project/Area Number |
18K15905
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
西山 大樹 順天堂大学, 医学部, 助手 (20816954)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マイクロRNA / 冠動脈疾患 / 予後 / HDL機能 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
血清中のHDLコレステロール(HDL-C)低値は、一次予防症例で冠動脈疾患発症のリスク因子であることが示されている。血清中のHDLのコレステロール引き抜き能(Cholesterol efflux capacity)の予後への影響を検討した臨床研究では、コレステロール引き抜き能が高いほど、心血管イベント発症率が低いことが示されており、動脈硬化性疾患の予後を改善するためには、コレステロール引き抜き能を改善させる治療が必要である。順天堂大学では、1984年より現在まで、30年以上のデータが蓄積されたPCI施行症例データベースを有している 。1984年2月からPCIを施行された症例では予後調査も完了、そのうち、2002例でPCI時の血清が-80℃にて分注保存され使用可能である。その血清を使用すればイベント発症を予測できるマーカーを後ろ向きに同定することが可能である。microRNA(miRNA)は遺伝子の転写後発現調節に関わる。miRNAによる転写調節は広範な生物学的プロセスに役割を担うことが明らかとなっており、動脈硬化においても様々なmicroRNAがその進行に関与することが報告されているが、そのうちマクロファージにおいてmiR-33や-26などがマクロファージに存在し、ABCA1やABCG1など、コレステロールのマクロファーシからの排出に極めて重要な働きを果たす遺伝子の調節に関与していることが示されている。本研究計画では、「HDL-Cの機能調節に関わるHDL上のmicroRNAを、動脈硬化疾患における治療標的あるいはバイオマーカーとして使用できる可能性」について検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、順天堂PCIレジストリからの(1) 臨床データすなわちPCI施行時の背景因子と予後(follow-up期間中の心血管イベントの有無)、(2)保存血清から単離したHDL上のmicroRNAの症例ごとの同定と定量化、そして(3)単離したHDLとcell line細胞を用いたHDL機能(コレステロール引き抜き能)の症例ごとに定量化、3つのパラメータを用い、HDL上に存在するmicroRNAの治療標的としての可能性とバイオマーカーとしての可能性をnested case-control研究にて検討している。2018年度は、順天堂PCIデータベースから、心血管イベント(心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中)をPCI後10年間で発症した100症例を無作為に抽出(イベント群, n=100)、それに年齢・性別・糖尿病・脂質低下薬を一致させた、10年間イベントのなかった症例を1:1で抽出した(非イベント群, n=100)。さらに、症例の凍結保存血清からApoA1レジンカラムを用いてHDLを単離する。予備検討にてすでにHDLの単離方法は検証済みで、超遠心・液体クロマトグラフィー・ポリエチレングリコールを用いた沈殿法に比して、この方法では、miRNAを含有するexosomeや他のリポタンパク粒子の混入が極めて少ないことがわかっている。HDL上のmiRNAを、 mirVana PARIS Kit(Thermo Fisher Scientific社)にて単離、その発現量をTaqMan MicroRNA Assays (Thermo Fischer Scientific)を用いて定量化した。さらにマイクロアレイを用い、miRNAの網羅的な解析のパイロット研究を開始した。研究計画に照らして、データベースからの症例抽出、HDL単離方法の確立、さらにはHDL上のmiRNA単離方法が確立しつつあり、miRNAのスクリーニングも開始していることから、比較的順調に推移していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、マクロファージ様細胞(THP-1またはJ774細胞)を、放射性同位体標識したコレステロールを含む培養液で培養し、上記で単離したHDLを加え、さらに培養する。培養上清中および細胞中の放射活性を測定し、総放射活性に対する培養上清中の放射活性の割合 (%) をHDLのコレステロール引き抜き能(cholesterol efflux capacity)として求め、その値と上記で得られた何らかのmiRNAの発現量との相関を検討する。さらに、イベントあり群・なし群で比較し、臨床的な病勢を反映するバイオマーカーあるいは、新たな動脈硬化治療標的となりうるmicroRNAを同定する。これまでにHDL-C値を上昇させる薬物治療、すなわちナイアシンやCETP阻害薬などの効果について臨床試験が行われてきたが、それらは予後を改善しない。一方でHDLの機能、すなわちコレステロール引き抜き能)は動脈壁において有害なコレステロールを除去する能力を示し、その能力が高いほど予後が良好であることが報告されている。HDLの機能に影響を及ぼす因子に関する研究は多く行われており、HDLの酸化による影響なども検討されている。HDL上に存在するmicroRNAの検討は十分に行われていない 。そのため、本研究計画で得られる成果は全く新しいものとなり、臨床的インパクトは大きいと考えられる。
|
Causes of Carryover |
2018年度に関しては研究計画初年度であり、本研究に関する学会発表に至らなかったため、そのための旅費が発生しなかった。次年度以降に、国際・国内学会含め、積極的に学会発表を行って成果を発信する予定としているため、2019年度以降にそのためのリソースが 必要であると想定している。さらに、HDL単離のためのカラムを、条件検討含め3本購入したが、2019年度以降、その数を増やしてより多くの検体を同時に測定できるようにする予定でありその購入コストも想定している。さらに、現時点ではイベント群3例、コントロール群3例、合計6例においてmiRNAを単離しスクリーニングを行なっているが、最大200症例に、今後スクリーニングを行う際のコストも想定されている。
|