2018 Fiscal Year Research-status Report
Electrophysiological mechanism of atrial fibrillation
Project/Area Number |
18K15906
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
永嶋 孝一 日本大学, 医学部, 助教 (90753989)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 心房細動 / 自己相関関数 / フラクタル次元 / カオス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
心房細動(AF)中においての左房および肺静脈の興奮は、ランダムなのか、カオスなのか、複雑系解析手法を用いて解析した。当院でAFに対し肺静脈隔離術(PVI)を施行した65症例(67±10歳、男性44症例、発作性AF[PAF]39症例)に対し、プロトコル通りに局所電位を記録、自己相関関数およびフラクタル次元といったカオス解析を行った。自己相関関数とは、局所電位を時間tだけ徐々にずらし、もとの波形との相似性を評価する方法である。値は-1~1をとり、1は完全一致、-1は完全裏一致、また0は無関係であることを表す。波形に規則性があると、自己相関関数も周期性を示し、カオスやランダムであると、すぐに0へと収束する。フラクタル次元は、その局所電位波形は何次元で説明されるか、ということを評価する。整数でなく次元が高値であるほど、カオス性が高いことを示す。 まずPAF症例のPVでは、持続性AF(PeAF)と比較し、有意に自己相関関数に周期的である頻度が高かった(41% vs 8%, P=0.004)。このことから、PAFにおいてPeAFと比較し、高頻度にPVからの規則的なdriverが見られることを示唆した。さらに、この手法は非PVに存在するdriverつまり”non-PV foci”を検出できる可能性も示唆した。続いて、PeAFではPAFに対し、LA本体でのフラクタル次元が高値であった(2.9±0.5 vs 2.7±0.3, P=0.02)。このことからPeAFでのLAリモデリングの進展が示唆され、フラクタル次元解析によるLAリモデリング評価の可能性が示唆された。さらに、PVI後にAFが持続した症例では、PVI前と比較し、LA本体で自己相関関数での周期的な波形に変化しており、こういった症例への新しいLAへの追加焼灼の可能性が示唆された。この結果を第83回日本循環器学会において口述報告した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本研究は前半1年で心房細動がカオスであるか、ランダムであるかの解明をいろいろな複雑系解析手法を用いて行い、後半1年で、カオスであった場合、その機序または規則性の解明を行う予定である。今回のアプローチは完全に前例のない独創的な手法であるため、手探り状態であった。実験計画に示したような多くの解析手法を試したが、自己相関関数やフラクタル次元解析が心房細動の局所電位の解析に対し有用であることが示された。これをもとに、2019年度は、カオスの裏に隠された規則性を、具体的に証明する手法を確立したいと考えている。そのためにはAIおよびディープラーニングが必要であると考えている。ただ、これらの分野もいまだに発展途上の分野であり、これらの手法を使用した解析ソフトについて、十分に検討を重ねて購入したいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
心房細動中の局所電位はカオスであり、特に発作性心房細動患者では肺静脈から、自己相関関数の規則的な波形が認められ、また左房本体の電位において、持続性心房細動患者のそれと比べて、カオス性が低かった。このことから左房リモデリングが進行するとカオス性が高くなることが示唆された。しかしながら、カオスの背景に隠れた規則性を解明するまでには至っていない。そのため、今後はこのカオスの裏の規則性をAIやディープラーニングと行った手法を用いて解明したいと考えている。具体的にはWolfram社のMathematicaを使用し、教師なし学習を行う。さらに並行して、この自己相関関数やフラクタル次元を、アブレーション時にリアルタイムに算出し、その結果を指標に、左房への追加アブレーションを行い、アブレーションによる心房細動の停止の有無を前向きに評価していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
当初、2018年度にカオス解析ソフトを購入し、心房細動中の局所電位がカオスなのか、ランダムなのかを解析し、その結果をもとに2019年度ではAIやニューラルネットワークのソフトを購入し、局所電位の規則性を解明するという予定であった。しかしながら、後者のソフトが予定よりも高値であったため、2018年度のカオス解析ソフトを自己負担で購入、2019年度のソフトに充てることに変更した。後者のソフトを今年度は慎重に吟味し、購入予定である。
|