2019 Fiscal Year Research-status Report
アレルギー性肺疾患における気道上皮前駆細胞の機能解析
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18K15915
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 泰三 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (90733832)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | SLPI / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は現在までにsecretory leukocyte protease inhibitor (以下SLPI)が、アルテナリア用いたマウス喘息モデルにおいてSLPIが重要である事を報告した(呼吸器学会2019年:口頭発表)。具体的には野生型のマウスに比べSLPIを欠損したマウスではアルテナリア喘息モデルに誘導される好酸球を伴う気道炎症が優位に強かった。これらの結果はSHプラスミドを用いたSLPIの減少マウスモデルにおいても再現する事ができた。次にこの原因として自然免疫を誘導する IL-33に注目し、野生型マウスに比較してSLPI欠損マウスではアルテナリア気道炎症モデルに誘導される肺胞上皮液中のIL-33の蛋白量をELIZA法にて検討した。SLPI欠損マウスでは野生型マウスに比較して、IL-33の蛋白量が優位に増加していた。以上の事から、SLPIはIL-33の発現を調節しており、自然免疫の増悪に関与すると仮定した。上記を検討する為、アルテナリア誘導気道炎症モデルにおける肺内の自然リンパ球数の変化をフローサイトメトリーを用いて検討した。野生型マウスに比較してSLPI欠損マウスでは、アルテナリア気道炎症モデルに誘導される肺内の自然リンパ球数が優位に増加していた。既存の報告にてエラスーターゼがこのIL-33-自然リンパ球の経路の調節に関与する事が報告されており、最後にSLPIとエラスターゼの関与を検討した。アルテナリア投与後に、エラスターゼ阻害剤であるBPTI又は生理食塩水をSLPI欠損マウスに投与した所、BPTIは優位に生理食塩水に比較してアルテナリア誘導性の気道炎症が抑制された。以上の結果から、気道上皮のSLPIは気道のエラスターゼバランスを調節し、IL-33の産生を調節し、自然免疫に関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・2019年3月までにsecretory leukocyte protease inhibitor (以下SLPI)が好酸球性のアレルギーに関与する事をSLPI欠損マウスと野性型マウスをアルテナリア気道炎症モデルを用いて検討したところ、SLPI欠損マウスでは野生型マウスに比較して、肺胞内洗浄液中の好酸球に優位に差を認めた事から、SLPIは自然免疫の調節において重要な蛋白である事がわかった。 ・2020年3月までには、SLPIがどの様に自然免疫の調節に関与するかの機序に注目して検討したところ、SLPIがIL-33の細胞内から細胞外への放出に関与し、肺の自然リンパ球を調節している事がわかった。更にこれらの差がエラスターゼ阻害であるBPTIにてキャンセルされる事がわかった。 ・これまでの検討結果から、気道上皮のSLPIは気道のエラスターゼバランスを調節する事により、細胞内から細胞外へのIL-33の放出を調節する事により、自然リンパ球による自然免疫に関与していると考えられる。これらの結果は喘息の増悪の機序の一因を示唆するものであり、将来の治療標的になりうると考えられる。 ・以上より、現在までの動物実験モデルを用いた検討の研究結果は、研究予定の7割を満たすものであり、おおむねに順調と考えられる。残りの30%は、これまでの結果をin vitrodでも検討し、結果の再現性を得られれば、論文化への労力を移行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究結果より、気道上皮のsecretory leukocyte protease inhibitor (以下SLPI)は気道のエラスターゼバランスを調節する事により、細胞内から細胞外へのIL-33の放出を調節する事により、自然リンパ球による自然免疫に関与していると考えられる。今後は、上記結果の再現性の確認およびヒトSLPIでも同様の結果が得られるのかを検討する。 具体的には、現在までの結果を再現する為、既存の報告にてSLPIとエラスターゼが結合する部位が報告されている事を利用し、エラスターゼの阻害しないSLPIプラスミドを作成した(以下変異SLPIプラスミド)。この変異SLPIプラスミドとSLPIプラスミドをSLPI欠損マウスに発現させた後にアルテナリアを投与する。我々の仮定が正しければ、変異プラスミドを投与された群ではSLPI群に比較して炎症の改善が見られない事が考えられる。 次に現在まではマウスにて検討を行ってきたが、ヒトでも同様の結果が得られるのかを検討する。その為に、in vitroにおいて、ヒト由来の気道上皮細胞をシャーレにて増殖し、70-80%増殖したところでSHヒトプラスミドを発現させ、その後にアルテナリアを投与する。数時間後に上澄み液を回収し、IL-33の蛋白量をウエスタンブロット法にて検討する。 上記を今年度にて検討する予定である。 又、時間の余裕があれば、IL-33は分解されたものの方が10-30倍の効果がある事が近年報告された為、SLPIにIL-33の分解への関与があるのかを検討する。具体的には、ヒトIL-33リコンビナント蛋白にヒト由来の好中球エラスターゼを加え、そしてヒトSLPI蛋白を加える群と加えない群を比較し、IL-33ウエスタンブロット法にて検討する。
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Causes of Carryover |
2019年度の夏から2020年度にかけて、実験計画は順調に進んでおり、研究者が体調問題で多くの時間を病気の回復に当てる必要があり、計画が一時頓挫してしまった。 現在までに多くの動物実験の計画が終了しており、今後は基礎実験での動物実験で得られた結果を証明する事が実験計画となる。特にマウスで得られた知見をヒトでも同様の知見が得られるのかを検討するために、抗体やヒトSLPIタンパクの購入に費用を当てる。その他は、論文化の為の英語修正費・論文の投稿費用、国内外の発表に費用を当てる予定である。
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