2021 Fiscal Year Research-status Report
進行肺癌を対象とした腫瘍免疫抑制回避と能動免疫を併用するがん免疫療法の臨床研究
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18K15928
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
冨田 雄介 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90648619)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害剤 / 肺癌 / T細胞 / PDー1 / 腫瘍抗原 / 腸内細菌 / がん免疫療法 / 腫瘍免疫微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が、新規がん精巣抗原(LY6K, KIF20A, CDCA1)特異的T細胞に及ぼす影響と、抗腫瘍効果との関連解析を行うため、進行肺癌患者において免疫チェックポイント阻害剤治療開始前・後の末梢血単核球細胞検体の保存、症例集積を継続中である。得られた検体を用いてマルチパラメーター・フローサイトメトリーを用いたT細胞解析を進めている。 当初は過去に申請者が同定した新規がん精巣抗原に特異的なT細胞に対して及ぼす影響と抗腫瘍効果との関連解析を行う予定としていたが、進行肺癌患者の末梢血中からは解析に必要な十分量の特異的T細胞を検出することができなかった。そのため、熊本大学呼吸器外科と共同研究を開始し、同定した新規がん精巣抗原(CDCA1)の肺癌所属リンパ節における遺伝子発現と術後再発の関係に注目し解析を進めている。手術検体・所属リンパ節におけるCDCA1発現と術後再発後のICIに対する効果に関する研究を進めている。さらに、腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞が多い患者とDrebrin陰性T細胞が肺癌組織内に存在することを同定した。2019年に導入したStrata Quest を用いて腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞を定量解析を行い、術後生存期間、術後無増悪生存期間の関係解析を進めている。 2020年から腸内細菌が腫瘍免疫活性化し能動免疫を促進する可能性に注目し解析を進め、その研究成果をCancer Immunology Research (IF =11)に2021年に報告した。現在も2021年に報告した研究成果をもとに腸内細菌叢の遺伝子解析を進めており、腸内細菌とICIの治療効果、抗腫瘍免疫応答の増強に対する研究へ解析範囲を広げ、研究成果の報告準備を進めている。これらの研究成果をICI(腫瘍免疫抑制回避)と免疫活性化を誘導する腸内細菌(能動免疫)を併用するがん免疫療法の開発につなげるための研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は進行肺癌患者のICIと新規がん精巣抗原特異的T細胞の関係に注目し解析を開始した。進行肺癌患者における腫瘍特異的T細胞の検出が十分にできずT細胞プロファイリングは達成できていないが、多重蛍光免疫染色とStrata Quest を用いた腫瘍免疫微小環境定量解析を導入し研究成果を複数報告できている。保存した患者末梢血検体からマルチパラメーター・フローサイトメトリー解析を行い、免疫サブセット解析結果を含めて4つの研究論文として報告することができた。新規腫瘍関連抗原CDCA1に関しては、手術検体を用いて所属リンパ節における発現解析を進めており、術後再発患者における免疫チェックポイント阻害剤の効果とリンパ節における腫瘍細胞のCDCA1発現の関連解析を進め術後アジュバント療法へのICI導入が現実的となり、術後アジュバント療法の治療効果予測にも応用できる可能性を考え準備を進めている。予期せぬ事態としてCOVID-19パンデミックとなり、研究施設の制限・がん患者への診療制限が必要となり研究を進めることができなくなった。しかし、COVID-19パンデミック下で、申請者のT細胞免疫やHLAに関する免疫学に関する知識を生かし、医学の発展へ貢献するためにSARS-CoV-2/ COVID-19と免疫システムに関する研究を新たに開始。2報の研究成果を報告することができている。さらに腸内細菌叢が能動免疫活性化に寄与する可能性に注目し、がん免疫療法(免疫逃避回避)の治療効果に与える影響に着目し、腸内細菌叢を修飾する整腸剤と免疫療法の効果に関する後方視的研究を開始し成果をすでに報告した(Cancer Immunol Res;IF 11)。さらに2021年度はこの研究成果を応用し、腸内細菌叢とICI及び能動免疫との治療効果の関連に注目して解析を進め、研究成果は2022年度中には報告する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
多重蛍光免疫染色を用いた腫瘍免疫微小環境定量解析を施行中に、腫瘍浸潤T細胞の中にT細胞が抗原提示細胞と接着する際に発現する淡白であるDrebrinを発現するT細胞と、Drebrinを発現していないT細胞が腫瘍内に存在することを発見した。もともとDrebrinは癌や神経細胞に高発現する分子として知られているが、腫瘍浸潤T細胞のDrebrinの機能や臨床的意義は不明である。Strata Quest を用いて腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞の定量化を間質と実質に分けて解析を行い術後無増悪生存期間との関係を評価し、合わせてDrebrin陽性T細胞の機能解析をin vitroで行っていく。腫瘍浸潤Drebrin陽性T細胞、術後再発患者における免疫チェックポイント阻害剤の効果との関連解析を進める予定である。 既に腸内細菌叢が腫瘍に対する能動免疫を活性化する可能性に注目し、がん免疫療法の治療効果(免疫逃避回避)に及ぼす影響に着目し、腸内細菌叢を修飾する整腸剤と免疫療法の効果に関する後方視的研究を2020年に行い、その成果を研究期間内に報告した(Cancer Immunol Res. 2020)。さらに本研究を発展させ、腸内細菌を標的とした(能動免疫活性化)治療とICI(免疫逃避回避)の併用による新規がん治療法の開発を目指し、研究を進め腸内細菌叢解析および免疫システムとの関係解明を試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延に伴い、臨床診療業務が増加し研究にエフォートを割くことに制限があった。病棟閉鎖などが複数回貸さなり検体集積の遅れ、解析の遅れも生じ、研究を思うように進めることができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。また、同時に学会参加も困難となったことも次年度使用額が生じた理由の一つである。
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