2018 Fiscal Year Research-status Report
肺炎球菌性肺炎においてSectm1aが肺の感染免疫機構へ及ぼす作用の解明
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18K15933
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鎌田 浩史 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60528545)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Sectm1a / 肺炎球菌肺炎 / 気道上皮 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の代表者はSecreted and Transmembrane1a(Sectm1a)が肺炎球菌肺炎感染マウスの肺において主に気道上皮細胞において産生され、肺炎球菌感染後の肺内への好中球の遊走の制御に関与している可能性を米国胸部学会の公式誌に報告した(Am J Respir Cell Mol Biol 2016; 55: 407-418)。この報告はSectm1aの肺のおける機能を明らかにした初めての報告であり、同誌のFeatured Articleに選出された。
そして、我々は2016年に世界で初となるSectm1aのノックアウト(KO)マウスの作成を開始した。具体的にはUniversity of California, Davis(UC Davis)よりSectm1aノックアウト凍結精子を購入し、理化学研究所筑波研究所でヘテロKOマウスに個体化する手続きを行った。本研究費助成の付与が開始された時点でSectm1aKOマウスが我々の所属する施設に存在し、安定し繁殖した後にSectm1aKOマウスを用いた実験を開始した。本報告作成の時点で、Sectm1aKOマウスは肺炎球菌感染後、WTマウスとの比較において肺内への好中球の集積が亢進し、かつ肺内の肺炎球菌の菌量が減少しているという、phenotypeを見出した。この所見は複数回の実験により確実に再現性が確認されている。
肺炎球菌性肺炎は、近年の抗菌薬やワクチンの開発にも関わらず、依然としてしばしば致死的となる呼吸器感染症であり、さらなる病態の解明および、新たな治療戦略の構築が望まれている。このような状況において、これまでほとんど研究報告のない新規のサイトカインであるSectm1aが肺炎球菌肺炎における生体防御において重要な役割を果たしていることを証明し、その機序を解明することは、新たな治療戦略の構築に貢献しうると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本報告作成の時点で、Sectm1aKOマウスを用いた肺炎球菌感染実験において、WTマウスとの比較で、Sectm1aが生体の肺炎球菌に対する生体防御に大きく関わっていることを示唆する確固たるphenotypeを見出している。そして、その機序の解明も進みつつある。これは、当初目標としていた進捗と概ね合致しており、我々は今後もさらなる本研究の発展に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
主に気道上皮より産生されるSectm1aがいかに好中球やマクロファージなどの自然免疫に大きく関与する白血球に作用を及ぼすかに着目し研究を進めていく。すでに、Sect1ma KOマウスにおいては好中球の遊走に関わるサイトカイン/ケモカインの肺内の濃度ががWTと較べて大きく変化している知見を得ている。
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