2018 Fiscal Year Research-status Report
アポトーシス細胞認識による気道上皮細胞の炎症制御機構の解明
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18K15942
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤野 直也 東北大学, 大学病院, 助教 (10633670)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重症喘息 / 好酸球性気道炎症 / Axl受容体チロシンキナーゼ / 基底細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
喘息は本邦では約1000万人が罹患している国民病である。既存の治療薬に抵抗性である重症喘息は成人喘息の50-100万人であり、頻回の増悪、ステロイド治療による副作用のため生活の質が著しく損なわれる。さらに、重症喘息に係る医療費は喘息全体の60%を超えるとされ、重症喘息を標的にした新規治療法開発が急務である。本課題では「重症喘息ではどのような分子基盤で気道炎症が遷延するのか」を核心的問いとし、重症喘息における気道炎症制御機構を標的とした新規治療戦略開発を目指す。 特に、本研究では死細胞認識分子として知られるAxl受容体チロシンキナーゼに着目して研究を行っている。 平成30年度は、健常症例、重症喘息症例から得られた気道粘膜生検組織を用いたAxl受容体チロシンキナーゼの発現細胞と発現変化を検討した。その結果、Axlは気道上皮幹細胞として知られる基底細胞に選択的に発現し、重症喘息症例ではその発現が低下していた。 喘息の炎症病態におけるAxlの役割を明らかにするために、Axl欠損マウスを用いてハウスダストダニ誘導性喘息モデルを作成した。その結果、Axl欠損マウスでは、野生型マウスに比較して、気道に浸潤する好酸球数が有意に増加した。 Axl抑制による好酸球性気道炎症増悪の分子メカニズムを検討するために、不死化ヒト気道上皮細胞株であるBEAS2B細胞を用いてRNAi干渉法を用いて、好酸球性炎症誘導に関与するサイトカイン、ケモカインの遺伝子発現を検索した。その結果、Axlによりいくつかのサイトカイン・ケモカインの遺伝子発現が抑制されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、Axlキナーゼと好中球性炎症との関連について検討する予定であったが、Axl欠損マウスを用いたin vivo研究の結果より、Axlは喘息病態において好中球性炎症よりも好酸球性炎症に強く関与することが明らかになった。そのため、分子メカニズムの検討としては、好酸球性炎症を標的とし検討を行うこととした。好酸球性炎症は重症喘息のほとんどを占めているが、重症喘息病態における好酸球性炎症の遷延の分子メカニズムは未だ不明確である。本研究は、 Axlに着目してこのことを解明できる可能性があり意義深いものと考えられる。
ヒト臨床検体を用いた研究、マウスモデルを用いたin vivo研究、ヒト気道上皮細胞株を用いたin vitro研究より、Axlが好酸球性気道炎症を抑制する可能性が本年度の研究で得られたため、進捗状況は順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヒト気道上皮細胞株を用いてAxlが発現制御する好酸球性サイトカイン・ケモカインを蛋白レベルで検証する。さらに、これら分子がAxlにより制御されているかin vivoマウスモデルでも検証する。
これらが検証された後に、Axlがこのようなサイトカイン・ケモカインの遺伝子発現をどのように制御しているか、細胞内シグナル伝達分子に着目して検討する。既知のNFkBシグナル、SOCS、TWISTなどに注目する。
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Causes of Carryover |
(未使用額が発生した状況) 当初好中球性気道炎症に注目して解析を行う予定であったが、マウスモデルでの解析では好酸球性炎症についてAxl kinaseの関与があることが新規に同定できた。そのため、一部予定していて試薬等の変更があり未使用額が生じた。 (次年度における未使用額の使用用途) 好酸球性炎症の解析についてその経費にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)