2018 Fiscal Year Annual Research Report
サーファクタント脂質合成酵素に着目した肺気腫形成の解明
Project/Area Number |
18K15945
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三上 優 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (50732806)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺気腫 / サーファクタント脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
タバコ煙等を原因とし、死亡率の増加が懸念されるCOPDの病態は、末梢気道病変による気流閉塞と2型肺胞上皮を始めとした肺胞の破壊による気腫性病変が複合的に作用することによって生じる。現在のCOPDの治療は末梢気流閉塞に対するアプローチが主体であり、肺胞上皮自身に働きかける治療は乏しい。申請者は2型肺胞上皮から分泌されるサーファクタント、特にサーファクタント脂質に注目し研究を行った。サーファクタント脂質の大部分を占めるホスファチジルコリン(PC)はKennedy経路およびremodeling経路によってアシルCoAより産生されるが、PCの多様性にはremodeling経路が重要であり、その経路を仲介するリゾリン脂質アシル転移酵素がサーファクタントの主要な機能である界面活性作用を示すジパルミトイルPCの産生に重要な役割を演じていることが知られている。申請者はタバコ抽出液誘導肺気腫マウスモデルを作成し、マウスから抽出した肺胞上皮細胞のRNA-seqによる網羅的検討において、リゾリン脂質アシル転移酵素が低下していることを見出した。次にリゾリン脂質アシル転移酵素のsmall interfering RNA(siRNA)を作成し、ヒト肺胞上皮細胞株であるA549細胞に上記siRNAを導入したところ、有意に細胞増殖の抑制を認めた。このことはリゾリン脂質アシル転移酵素が肺気腫患者において発現が低下し、肺気腫の原因となる肺胞上皮細胞の増殖抑制・アポトーシスを誘導して肺気腫の増悪に関与することが示唆された。
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