2018 Fiscal Year Research-status Report
老化関連長鎖ノンコーディングRNAの制御による肺線維症難治性の克服
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18K15948
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阪本 考司 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00635633)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リプログラミング / 肺線維症 / ノンコーディングRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、加齢関連難治の肺疾患である肺線維症において線維芽細胞の線維化誘導性細胞老化が難治性の病態形成に寄与するとの仮説から、新規の細胞運命決定である長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)に注目し、同病態の線維芽細胞の細胞老化を制御するlncRNA群を同定することで疾患の新たな治療標的や疾患のバイオマーカー開発に資することを目指すものである。初年度であるH30年度は以下の研究を進めた。 老化線維芽細胞関連lncRNAの同定:老化細胞のモデルとして肺ヒト線維芽細胞に150μMの過酸化水素水で刺激し、3日後の細胞表現型を解析。老化関連βgal染色の陽性化、WST試薬による細胞増殖の低下、p16の発現増強、SASP(老化関連分泌表現型)としてMCP-1などの発現上昇を確認した。同時に筋線維芽細胞の表現型獲得を認めた。同様の表現型の変化を細胞の繰返し継代によっても観察した。これらの老化誘導細胞よりRNAを抽出し、IPFで特異的に発現低下が認められたlncRNAであるXの発現を解析し、幼弱線維芽細胞に比べ優位な低下を示すことを確認した。TGF-βによる刺激においてもlncRNA_Xの発現は低下した。 老化線維芽細胞リプログラミングの検討:上記の老化誘導の実験に用いた組織微小環境因子である低酸素の細胞への影響を検討したところ、組織低酸素は繰り返し培養および酸化ストレス誘導による老化線維芽細胞の表現型をリプログラミングすることを見出した。 ブレオマイシン(BLM)肺線維症モデルにおけるP19Arf発現老化細胞除去の線維化抑制効果の検証:老化細胞可視化モデルであるARF-DTRマウスに対してBLMの単回気管内投与による肺線維症の誘導を行った。14日目のマウス肺は線維化の組織像の形成とともに、p19arfシグナルの大幅な増強を認めた。マウス肺線維症における老化細胞の増加が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞の老化誘導により変化が見られるlncRNA群からsiRNAでの細胞老化表現型が見られる機能性lncRNA群の選定が進んでいない。lncRNA発現を効率的に抑制するshRNAベクターの作成に時間がかかっている。 ARF-DTRマウスでの老化細胞除去による治療効果を検定しているが、マウス個体間のデータの誤差が予想よりも大きいことが分かった。統計学的な検定をもって定量するためには相当数のマウスを実験に供する必要がありそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
老化関連lncRNAの発現抑制を可能にするshRNAベクター、および発現誘導を可能にするためクローニング及び発現ベクターの作成と、これを用いた線維芽細胞の老化関連表現型の変化の確認を行っていく。 昨年度の研究結果により組織微小環境としての低酸素が老化の若返り効果を持つことが確認されたため、老化によって変化するlncRNA群のうち低酸素で復帰するものを同定する方向で、機能性lncRNAの絞り込みを行っていく。 ARFDTRマウスを用いて老化細胞除去による肺線維症形成における細胞老化の寄与を定量的に確認していくとともに、上記細胞実験で確認された老化関連lncRNAをウイルスベクターおよび薬剤で制御し、治療効果の確認を進めていきたい。
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