2018 Fiscal Year Research-status Report
アスベストにより惹起される自然免疫系炎症をターゲットとした悪性胸膜中皮腫の創薬
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18K15962
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
南 俊行 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00705113)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性胸膜中皮腫 / アスベスト / 腫瘍関連マクロファージ / インフラマソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性胸膜中皮腫(Malignant Pleural Mesothelioma: MPM)は胸部腫瘍において極めて悪性度の高い予後不良の腫瘍の一つである。アスベストがMPMの発生に関与している事は疫学的にも明らかだが、腫瘍形成後の進展についてのアスベストの関与については分かっていない。 癌微小環境を構成する主たる細胞の一つとして、マクロファージ(MΦ)がある。アスベストを取り込んだMΦにおいては、inflammasomeが活性化し、IL-1βといった炎症性サイトカインの分泌を促していると考えられる。本研究ではこれらの炎症性サイトカインが腫瘍の進展に与える影響を解析し、治療標的となるかを検証している。 本年度は、まず正常中皮細胞とMPM細胞を用いて、炎症性サイトカインIL-1βとその受容体IL-1受容体(IL-1R)の発現を調べた。その結果、IL-1βの発現に差はなかったが、IL-1Rの発現がMPM細胞で著しく亢進してた。次に、特にIL-1Rの発現が強かったH2452細胞を、recombinant IL-1βで刺激し、3次元培養した所、中皮腫の癌幹細胞マーカーとされているCD26の発現増強と足場非依存性の細胞増殖効果が得られた。さらにMΦへの分化誘導可能なTHP-1細胞とH2452細胞を共培養した所、やはりH2452細胞でのCD26の発現が亢進とTHP-1細胞でのIL-1βの産生が亢進しており、MΦがIL-1β産生のsourceとなり、MPM細胞に作用していると思われた。THP-1細胞のCaspase-1をKDした所、CD26の発現誘導が抑制され、アスベストで刺激されるMΦのinflammasomeは中皮腫の癌幹細胞化に関わっている事が示唆された。 今後は、ヒトMPM臨床検体を用いて、腫瘍細胞のIL-1Rの発現と予後や化学療法の効果との相関関係を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い、本年度は主に正常中皮細胞とMPM細胞を用いて、in vitroの解析を行った。アスベストによってMΦにおけるインフラマソームが活性化される事で放出される炎症性サイトカインIL-1βがMPMに与える影響について、当初はMPM細胞の増殖や転移促進に働くと想定していたが、増殖assayでは有意な影響が観察されなかった。その一方、IL-1βによるCD26の発現誘導に見られるMPMの癌幹細胞化についての新たな知見が得られ、IL-1βはMPMの悪性度を促進してしまうことが分かった。アスベストはMΦに貪食されるが、分解除去される事なく、MΦ内のinflammasomeを活性化していると考えられる。H2452細胞とMΦに分化させたTHP-1細胞との共培養の結果、やはりH2452細胞のCD26の発現が誘導されると同時に、THP-1細胞においてはIL-1βが誘導された。これらの結果事から、MPMにおけるIL-1βのsourceとしては腫瘍関連マクロファージの可能性が高いと思われた。 上記結果については、第25回石綿・中皮腫研究会および第59回日本呼吸器学会学術講演会で発表することができた。 以上から、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行ったin vitroの実験により、MPMの悪性化に炎症性サイトカインIL-1βが関与している事が明らかとなり、またそのsourceとしては腫瘍関連MΦである可能性が示唆された。実臨床において腫瘍関連MΦ由来のIL-1βとMPM細胞のIL-1Rの経路を標的とするには、臨床検体を用いた検討が不可欠である。 そのため、当院で採取されMPMと診断されたヒト臨床検体についてIL-1βとIL-1Rの免疫染色を行う事を、本学の倫理審査委員会に申請し承認を得ている。これによって、IL-1βのsourceが腫瘍関連MΦである事、MPMにおけるIL-1Rの過剰発現がある事をヒト臨床検体を用いて確認及び検証することが可能となった。まずは、IL-1Rの発現強度と化学療法の奏効率および患者の予後との相関関係を解析する予定である。 上記臨床検体の解析のため、患者から余剰検体の使用の同意を得ているMPMの臨床検体をこれまでに50例集積した。2019年度これら臨床検体についての検討を行い、研究成果を学会で発表し、2019年度中に論文化する事を目標としている。
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Causes of Carryover |
(理由) 今年度はin vitroの実験が主であったため、試薬の購入などが、思ったよりは少額で済み、また実験についても比較的順調に推移したため、未使用額が発生した。 (使用計画) 次年度は、ヒト臨床検体の免疫染色での解析を行うことを想定していて、すでに患者本人から余剰検体の同意を文書で得ている検体が50件集まっている。この解析に際し、抗体および試薬の使用量が大きく増加すると思われ、未使用額分を含めた助成金を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Challenges for the development of immunotherapy in small-cell lung cancer.2018
Author(s)
Minami T, Kinehara Y, Morimura O, Kitai H, Fujimoto E, Negi Y, Kanemura S, Shibata E, Mikami K, Yokoi T, Kuribayashi K, Kijima T.
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Journal Title
Med Res Arch.
Volume: 6
Pages: 1-15
Peer Reviewed
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