2018 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸の腎保護メカニズムの解明と新たなCKD治療法の確立
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18K15971
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
三上 大輔 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (90464586)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 短鎖脂肪酸 / GPR41 / GPR43 / 腸腎連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,①予備実験で成功した慢性腎不全モデルであるアデニン負荷マウスへの短鎖脂肪酸投与による腎保護効果の検証を,匹数の増加と検証項目の追加で確定する.②GPR41/43ノックアウトマウスにアデニン負荷を行い,短鎖脂肪酸の作用がGPR41/43を介するものであることを検証する,の課題を以下の方法で行う方針とした. ①アデニン負荷慢性腎不全モデルマウスでの短鎖脂肪酸による腎保護効果の検証:7週齢のC57BL/6マウスに0.2%アデニン負荷食を摂食させ,そのマウスを0.5%または1.0%プロピオン酸添加水を与える短鎖脂肪酸投与群と無添加水を与える群,更に普通食に無添加水を与えるコントロール群の4群に分け,6週間後,24時間蓄尿で蛋白尿の変化,採血で血清Cr,BUN値の変化,腎病理組織での間質の線維化,炎症細胞の浸潤の変化を解析した.さらに,腸腎連関の可能性の検討のため小腸の病理組織の検討も行い,腎組織の線維化と小腸上皮組織の萎縮の相関性を検討した. ②アデニン負荷GPRsノックアウトマウスでの短鎖脂肪酸よる腎保護効果の検証:短鎖脂肪酸の作用がGPR41,GPR43を介する事を明確にするために,GPR41,GPR43ノックアウトマウスに①と同様にアデニン負荷食を行い,6週間後の血清Cr, BUN値,腎臓組織の病理学的変化を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題①については,予備実験と同様に,アデニン負荷による慢性腎不全形成による血清Cr,BUNの増加をプロピオン酸(0.5%,1.0%)の投与で有意に抑制することが示された.また腎病理組織においても,間質線維化,炎症細胞浸潤をプロピオン酸の投与で有意に抑制する事が示された.また,Crの上昇(腎機能の悪化)とともに,小腸上皮細胞の萎縮度が相関することが病理所見で判明した.よって,腸腎連関につながる結果を得ることが出来た.蓄尿による尿所見の改善効果に関しては実験が未であり,今後の課題である.
課題②については,コントロール群とGPR41, GPR43ノックアウトマウスにアデニン負荷を行いで比較した結果,コントロール群と比較して,GPR43ノックアウトマウスが有意にCrの上昇することが判明した.以上の結果より,GPR43の発現の有無が腎機能悪化の進行に影響する可能性を見出した.現在,GPRノックアウト群とコントロール群にアデニン負荷を行い,更にプロピオン酸を飲水させての腎機能の変化の評価を実験中である.
以上の結果から,おおむね順調に実験が進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
①アデニン負荷マウスでの短鎖脂肪酸による腎保護効果の分子機構の解明:昨年の実験で得られた腎組織からcDNAを作成し,同時にタンパク質も抽出する.cDNAを用いて,炎症,線維化に関わるMCP-1, IL-6,IL-1b,RANTES, TNF-α,TGF-β,PAI-1,VEGF-C,VEGF-AのmRNA発現をTaq-Man® probeを用いたreal-time PCR(ライフテクノロジーズ・ジャパン StepOne Plus)で解析する.また,抽出タンパク質を用いて,in vitroの実験で得られた,p38,JNKのリン酸化の変化を各群でウエスタンブロッティング法により確認する.病理組織を用いた免疫酵素法で,M1マクロファージ(CD80, CD86),M2マクロファージ(CD163, CD206)の浸潤の変化の有無を確認する予定である。
②アデニン負荷GPRsコンディショナルノックアウトマウスでの短鎖脂肪酸による腎保護効果の検証:更なる発展研究として,腎尿細管上皮に発現するGPR41, GPR43による抗炎症作用を確認するため,尿細管上皮のGPR41, GPR43に対するコンディショナルノックアウトマウスを作製する.GPR41, GPR43に対するfloxP配列導入マウスの作成は外部委託し,尿細管上皮特異的プロモーター領域にcre配列を導入したマウス(PEPCK-creマウス:バンダービルト大学、Volker Haase教授から供与)を使用して当施設で交配する.同様にアデニン負荷食に対する0.5%または1.0%プロピオン酸水投与で,6週間後の血清Cr, BUN値,腎臓組織の病理学的変化を検討する方針である.
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Causes of Carryover |
昨年度は,学会参加による旅費の計上がなく,物品費も予定額以下であった.今年度は,線維化に関与するサイトカインの測定,腎病理の免疫染色による解析を行う.線維化に関わるMCP-1, IL-6,IL-1b,RANTES, TNF-α,TGF-β,PAI-1,VEGF-C,VEGF-AのmRNA発現解析をTaq-Man® probeを用いたreal-time PCR(ライフテクノロジーズ・ジャパン StepOne Plus)で行うため,プローブの購入に使用する.
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