2019 Fiscal Year Research-status Report
可溶性ウロキナーゼ受容体を指標とするネフローゼ症候群の新たな診断・治療指針の確立
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18K15988
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
藤本 圭司 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (30460364)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 尿中可溶性ウロキナーゼ受容体 / 原発性ネフローゼ症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)尿中可溶性ウロキナーゼ受容体(suPAR)が原発性ネフローゼ症候群(NS)の蛋白尿惹起因子である可能性についての臨床疫学的検討:新規症例を追加して検討した。尿中suPARと蛋白尿の因果関係を疫学的に検討するうえで、血清suPAR、eGFRならびにSelectivity Indexが交絡因子と考えられるため、重回帰分析による調整を行った。治療前baseline値の横断的解析では、尿中suPARは血清suPAR、eGFRならびにSelectivity Indexとは独立した尿蛋白量予測因子であった[標準化偏回帰係数(stdβ)=0.879、p<0.00001]。さらに、治療開始2カ月間の縦断的解析では、尿中suPAR変化量は血清suPAR変化量、eGFR変化量なならびにSelectivity Indexとは独立した尿蛋白変化量予測因子であった(stdβ=0.574、p=0.003)。また、baselineの尿suPARと尿L-FABP、治療開始後2カ月間の尿suPAR変化量と尿L-FABP変化量にそれぞれ有意な相関を認めた(r=0.522、p=0.001; r=0.395、p=0.017)。以上から、疫学的には尿中suPARが蛋白尿を惹起し、蛋白尿による近位尿細管障害(尿L-FABP上昇)が生じている可能性が示唆され、本研究の仮説を支持する結果であった。 (2)原発性NSにおけるsuPARと腎機能予後との関係:尿中suPARと腎機能予後との関係についてもこれまで明らかにされていないため検討した。Cox回帰分析では、末期腎不全のサロゲートマーカーであるbaselineからの血清Cr1.5倍化の予測因子として、血清suPARは有意な因子であったが(血清suPAR500pg/ml増加毎にハザード比1.36、p=0.006)、尿中suPARは有意な因子ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
培養尿細管上皮細胞実験は、当初のプロトコールではコントロールにおいてAP-5(活性型β3インテグリンに対する抗体)の非特異的陽性を認めたため、その原因を精査中であるが難航している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)最近、suPARが尿細管上皮細胞β6インテグリンを活性化させる報告があったため、培養尿細管上皮細胞実験においては、当初予定のβ3インテグリンに対する抗体を用いた実験に加え、β6インテグリンに対する抗体を用いた実験も試みる。 (2)治療にリツキシマブを使用したステロイド依存性を示す原発性NS症例が蓄積されてきている。これらの症例を対象としてリツキシマブ投与前後の血清および尿suPARの動態について解析し、suPARがステロイド依存性NSに対するリツキシマブ治療の効果判定指標として有用であるか検討する。
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Causes of Carryover |
原発性ネフローゼ症候群の新規発症症例が少なかったため、検体測定費用が予測よりも少なくなり、次年度使用額が生じました。
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Research Products
(3 results)