2018 Fiscal Year Research-status Report
尿細管由来蛋白を指標とした慢性腎臓病の予後予測と線維化進展機序の解明
Project/Area Number |
18K16002
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田中 景子 東海大学, 医学部, 客員講師 (80794370)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 慢性腎臓病 / 間質線維化 / 予後予測 / トレフォイルファクター |
Outline of Annual Research Achievements |
トレフォイルファクター(TFF)は消化管粘膜上皮を含む各種上皮細胞から産生される蛋白であり、mucinとともに粘膜の恒常性維持、傷害修復過程に重要な役割を果たす。TFF1、2、3 に分類され、それぞれ発現部位や生理作用が異なっている。なかでもTFF3は腎尿細管に発現する。我々の腎生検組織の検討では、TFF3 がヒト腎尿細管上皮細胞に発現していること、またその発現量の増加が、尿中TFF3濃度の増加や尿細管間質の線維化と強く関連することが示唆された。本研究では「TFF3が腎尿細管上皮細胞の保護因子として働き、その発現上昇が予後予測のマーカーとなる」仮説を立てて検証を行う。本研究の目的は、TFF3の発現調節機構を明らかにし、TFF3が慢性腎臓病の進行抑制の新規治療戦略となりうること、また尿中TFF3の腎予後予測因子としての意義を明らかにすることである。 当該年度は、ヒト腎生検組織の微量検体からRNA解析を行い、TFF3 mRNA発現量と尿中TFF3濃度との相関をみた。日本人に最も多い腎炎であるIgA腎症患者12症例において、TFF3 mRNA発現量と尿中TFF3濃度に有意な相関があることが明らかとなった。この患者群においても、尿中TFF3の上昇は尿細管間質障害マーカーの上昇と有意な相関があり、また組織の線維化スコアと有意な関係がみられた。またヒト腎組織の連続切片の免疫染色において、TFF3の発現部位がUMODの発現部位とオーバーラップしていることが分かった。これらの結果から、IgA腎症において、TFF3は尿細管上皮細胞とくにUMOD発現部位と同部位に発現しており、その発現量と尿中への分泌量は、IgA腎症の間質線維化の進展に強く関係していることが示唆された。そしてこの研究成果を論文発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養尿細管上皮細胞(HK細胞、mProx細胞)を用いたTFF3発現調節機構の検討において、TFF3発現刺激因子であると予測した因子;慢性腎臓病に関連があるとされる線維化(TGF-β、AngⅡ)、虚血・低酸素、炎症(IL-6、iNOS)、高糖濃度(グルコース、フルクトース)、等で尿細管上皮細胞を刺激したが、予想に反しTFF3の発現増加はみられなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、慢性腎臓病(CKD)進展予測因子としての尿中TFF3増加の意義を検討する。外来患者を対象とし、尿中TFF3測定開始時点から、2年後までの腎不全進行状況を追跡する。腎機能の低下速度の評価に加え、血清Crの1.5倍化、またはeGFRの30%低下や、透析・移植導入のアウトカム到達率をみる。測定開始時点と各フォローアップ時点では、本研究の標的バイオマーカーである尿中TFF3に加え、他の尿中因子も同時に測定し、経時的動向を比較検討する。TFF3に対する特異抗体を用いたELISA系は開発終了しており、尿中物質は、多項目同時測定可能であるマルチプレックスアッセイシステム(Bio-Plex)を利用する。
|
Causes of Carryover |
H30年度に計画していた培養細胞を用いた実験は予想に反した結果となり終了したため次年度への繰越金が発生した。これをH31年度の新規尿中因子測定の研究費用にあてる。
|