2018 Fiscal Year Research-status Report
皮膚虚血再灌流障害モデルにおけるサイトカインの役割の研究
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18K16021
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
前田 進太郎 金沢大学, 医学系, 助教 (10707079)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 虚血再灌流障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
C57BL/6系統で8~12週齢の雄の野生型及びIL-4、IL-6、IL-17A、IFN-γを欠損したマウスで皮膚虚血再灌流障害マウスモデルを作成した。マウスの背部に、虚血再灌流障害の結果生じた潰瘍の経時的変化を野生型と遺伝子欠損マウスで比較した。IL-6およびIFN-γの欠損マウスでは明らかに虚血再灌流障害が軽減し、ピーク時の潰瘍の面積は野生型よりも小さく、また潰瘍の治癒も早かった。IL-4およびIL-17Aの欠損マウスではピーク時の潰瘍面積も治癒状況にも明らかな差はみられなかった。また潰瘍周囲の組織を採取して、マクロファージ、好中球、T細胞などの炎症細胞の計測を行ったところ、いずれも野生型と比較して、虚血再灌流障害後のマクロファージの浸潤細胞数が少ない傾向にあった。 また、潰瘍周囲における、Nitric Oxide(NO)の関与を調べるため、NO synthetase(NOS)をreal-time PCRで測定した。NOSはnNOS、eNOS、iNOSの3種類を測定した。IL-6およびIFN-γの欠損マウスでは野生型よりもiNOSの発現レベルが低下していたが、nNOSおよびeNOSでは差はみられまかった。皮膚虚血再灌流障害においてはiNOSの関与が大きいことが判明したため、野生型マウスにiNOSの阻害薬を投与した上でマウスモデルを作成したところ、投与群では潰瘍の治癒が早まる傾向にあった。 以上より皮膚虚血再灌流障害においてはマクロファージおよびそこから誘導されるiNOSが大きな役割を持つことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
虚血再灌流障害による潰瘍の経時変化を比較するために、野生型・遺伝子欠損マウス計5種類をいずれも多数マウスモデルの作成にあてる必要があり、それに時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
若干遅れている分も含め、当初の予定通り研究を進めていく。IL-4およびIL-17A欠損マウスでは野生型マウスと比較して虚血再灌流障害により生じた潰瘍の大きさ・治癒状況に明らかな差はみられなかったため、IL-6およびIFN-γの欠損マウスに対象を絞って研究を進める。
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Causes of Carryover |
研究段階に報じて研究費を執行したため当初見込んだ額とは異なっている。 潰瘍周囲の組織におけるサイトカイン、ケモカイン、接着分子などの発現をreal-time PCR、ELISA法、cytometric bead array assay(CBA)を用いて測定する。また、潰瘍周囲の組織から白血球を抽出し、浸潤細胞のサブセットとそれらの発現するサイトカインを明らかにし、その経時的変化を追う。野生型マウスにIL-6、IFNγの中和抗体を経静脈的に投与して、虚血再灌流障害でサイトカイン遺伝子欠損マウスにおいてみられるのと同様の変化がみられるかどうかを検証する。また、サイトカインがマクロファージを直接刺激することでiNOSの発現を誘導しうるかを確認する。野生型マウスの腹腔内から採取したマクロファージをIL-6、IFNγとともに培養し、培養上清でELISAを施行してiNOSを測定する。 虚血再灌流障害においてマクロファージのM1・M2どちらが優位かを潰瘍周囲組織の免疫組織染色を用いて検討する。M1とM2の比が虚血再灌流サイクル中とその後で変化があるかについて経時的な観察も行う。
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