2018 Fiscal Year Research-status Report
好中球と表皮細胞に起因した重症薬疹発症の機序解明と早期診断血清マーカーの確立
Project/Area Number |
18K16022
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
木下 真直 山梨大学, 医学部附属病院, 医員 (90813717)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スティーブンス・ジョンソン症候群 / 中毒性表皮壊死症 / 表皮細胞死 / ネクロプトーシス / 好中球 / NETs |
Outline of Annual Research Achievements |
重症薬疹であるStevens-Johnson症候群(SJS)と中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrolysis: TEN)は投薬による医原性疾患であり、時に致死的となる。SJS/TENの病態は、全身の広範な表皮細胞の壊死による生体バリアの崩壊であるが、表皮細胞死の分子機序は十分に解明されていない。本研究では、患者血清・ヒト表皮培養系・ヒト血液細胞培養系を用いて、細胞死を誘導するシグナル分子と、そのシグナル受容体や細胞内転写因子活性による表皮細胞死のカスケードを同定し、重症薬疹における表皮細胞壊死の分子メカニズムを明らかにすることを目標としている。 我々はこれまでに、①、②を明らかにした。 ① SJS/TEN患者血清中のLL-37(抗菌ペプチドの一種)濃度が発症早期から顕著に上昇する ② 表皮に浸潤する好中球がLL-37を発現し、表皮細胞の細胞死誘導に関与するFPR1受容体発現を惹起させる FPR1受容体はSJS/TENで見られる特異な表皮細胞死(ネクロプトーシス)を誘導する受容体である(Saito et al., Science Translational Medicine 2014)。 これらの結果から、「好中球が放出するLL-37がSJS/TENの主病態である表皮細胞壊死(ネクロプトーシス)のスイッチを司っている」ことが分かった。さらに興味深いことに、SJS/TEN皮膚組織に浸潤した好中球は活性化し、Neutrophil extracellular traps (NETs) を形成することで、LL-37を細胞外に放出しており、これはSJS/TENの疾患特異的な事象であることが、種々の患者検体を用いた解析により判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに主に次の2点が判明している。 1. SJS/TENでは、表皮内に浸潤した好中球がNETsを形成し、LL-37を放出する。 2. LL-37は表皮細胞に「死の受容体」であるFPR1発現を誘導し、広範なネクロプトーシスによる表皮細胞死を惹起する。
SJS/TENの発症には、薬剤に感作されたCD8 T細胞による獲得免疫反応が発端となると考えられている。そのため、薬剤反応性CD8 T細胞が好中球を活性化させている可能性を考え、次なる解析を行なっている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の3点に注目して研究を行う。 1. SJS/TEN既往患者から薬剤反応性単核球を分離・培養し、これらの細胞が薬剤刺激により放出する分子を質量分析により網羅的に解析する。 2. 薬剤刺激により薬剤反応性単核球が放出する分子のうち、好中球にNETsを誘導する物質を抽出する。 3. 単核球由来のNETs誘導物質ならびに、LL-37がSJS/TENの早期診断マーカーとなり得るか、について症例数を増やした解析を行う。
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Causes of Carryover |
SJS/TEN既往患者から薬剤反応性単核球を採取し、分離・培養する実験系において、研究倫理委員会の承認ならびに患者検体の収集に時間を要した。そのため、本年度に行う予定であった薬剤反応性単核球を用いた実験系を、次年度に行うように予定を変更したため。
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