2018 Fiscal Year Research-status Report
悪性黒色腫の局所性レニン-アンジオテンシン系を介した線維芽細胞の腫瘍免疫応答解析
Project/Area Number |
18K16023
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中村 謙太 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (90804170)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 悪性黒色腫 / 線維芽細胞 / アンジオテンシン |
Outline of Annual Research Achievements |
予後不良である進行期悪性黒色腫の新規治療として、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1/PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体など)が認可され、第一選択として現在使用されている。がんは、免疫の過剰な活性化を抑制するためのブレーキ役であるPD-1/PD-L1やCTLA-4といった免疫チェックポイント分子を利用させることで、免疫のサーベイランスから逃れている。免疫チェックポイント阻害薬は、がんが悪用している免疫チェックポイント分子の働きを抑制することで腫瘍免疫応答を促して、がんを征圧するという新規の治療法である。しかしながら、単独での奏効率は約2割に留まり、免疫チェックポイント阻害薬の併用療法(抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体)の奏効率でも約4割であり、それぞれ、約4~5割の症例が過剰な自己免疫反応によって治療が中断される。そのため、副作用を増強されることなく、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を阻害している免疫抑制性の腫瘍微小環境を改善する必要がある。 私たちは、腫瘍微小環境の局所性のレニン-アンジオテンシン系がマクロファージを介して腫瘍免疫を抑制することを報告したが、本研究では、アンジオテンシン受容体を発現する線維芽細胞の腫瘍免疫に与える影響やメカニズムを解析した。 ヒトとマウスの線維芽細胞株をin vitroでアンジオテンシンの添加やARBの添加すると、RANTESの産生が制御された。また、マウス悪性黒色腫細胞株(B16)を、C57/B6マウスに皮下移植し、ARBを投与した群とコントロール群を比較すると腫瘍抗原特異的な腫瘍免疫がARB投与群で有意に増加していた。現在、そのメカニズムをアンジオテンシン受容体ノックアウトマウスを用いて解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトとマウスの線維芽細胞株をin vitroでアンジオテンシンの添加やARBの添加によって、産生される因子やシグナル伝達の変化を、FACSを用いたCytometric Bead Arrayや、抗体アレイ法を用いて網羅的に検索し、RANTESが制御されていることを認めた。また、マウス悪性黒色腫細胞株(B16)を、C57/B6マウスに皮下移植し、ARBを投与した群とコントロール群を比較すると腫瘍抗原特異的な腫瘍免疫がARB投与群で有意に増加していた。このメカニズムを解析するために、アンジオテンシン受容体ノックアウトマウスを輸入し、解析を行っている。 また、腫瘍からのがん関連線維芽細胞の回収方法だが、MACS beadsを用いた回収方法では、回収率が低いため、現在、セルソーターを用いた回収を進めている。それから、ヒト検体の集積も、single cellを凍結して保存できており、今後、解析を進めていく予定である。進捗状況として、概ね当初の予定通り進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
アンジオテンシン受容体ノックアウトマウスを輸入し飼育しており、今後、マウスの線維芽細胞株のアンジオテンシン受容体をノックアウトさせたものと通常株を、マウスの悪性黒色腫細胞株とin vitro、in vivoで共培養させ、腫瘍の細胞増殖に変化があるか検討する。また、腫瘍組織の免疫染色で浸潤する免疫細胞の種類や、間質の線維化や血管新生の変化をみる。これにより、線維芽細胞が腫瘍へ直接的な影響を与えるか、または、腫瘍免疫や間質の環境を介して腫瘍へ働いているか解析する。 上記のin vivoでのモデルで、所属リンパ節での腫瘍抗原(gp100)への特異的なT細胞応答を、T細胞の腫瘍抗原に対するIFNγ産生能で評価する。これにより、線維芽細胞の抗原特異的な腫瘍免疫への影響に、アンジオテンシン系のシグナルが関与するか解明する。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) ・当初の計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) ・次年度使用額は平成31年度請求額と合わせて消耗品費として使用予定である。
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