2019 Fiscal Year Research-status Report
染色体分配異常を伴う新規早老症患者の疾患発症メカニズムの解明
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18K16040
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤田 春美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (30736971)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 染色体分配 / 老化 / 紡錘体チェックポイント |
Outline of Annual Research Achievements |
紡錘体チェックポイント(SAC)は、分裂期の細胞において、姉妹染色分体の娘細胞への均等な分配を保証するための監視機構である。申請者らは、SAC異常と全身性老化症状を同時に呈する症例をはじめてヒトで見出した。患者は細胞周期制御遺伝子CDC20の片アレルに新規で生じた突然変異を有しており、これより「ヒトにおいてSAC異常が早期の組織恒常性低下(早老性)の原因となりうる」という概念を提案することを目的に検討を行っている。2019年度は、主に患者CDC20変異を両アレルにノックインした遺伝子改変マウスの表現型解析を行ったが、残念ながら早老性の表現型の再現を確認することができなかった。変異を両アレルで有するノックインマウスの生存曲線は、野生型マウスおよび変異を片アレルで有するノックインマウスとほぼ同様であり、有意差を確認することができなかった。また、過去に報告されたSAC異常マウスモデルのひとつであるBUBR1低発現マウスでは、低体重・脊柱湾曲・白内障・筋繊維萎縮・皮膚組織萎縮など全身組織の萎縮・機能低下が報告されている。本マウスでもこれらの老化症状について組織学的検討を行ったが、いずれも有意な表現型を確認することができなかった。本マウスでは体細胞染色体数のばらつきにも有意差が見られなかったことから、SAC異常が誘導されていないか不十分である可能性が考えられる。残念ながらマウスモデルでは表現型の確認はできなかったものの、現在、患者および変異をノックインしたヒト細胞株の解析から得られた成果を学術論文として纏めているところであり、2020年度の学術雑誌公開を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で解析予定であった遺伝子改変マウスが想定していた表現型を示さなかった。また、論文執筆の過程で投稿戦略を変更したことから、執筆に想定以上の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を纏めた論文を学術雑誌に投稿し、公開を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究で解析予定であった遺伝子改変マウスが想定していた表現型を示さず、マウス解析に用いる予定であった研究費に未使用額が生じた。また、本研究の論文執筆に時間を要し(投稿戦略の変更のため)、論文受理が本年度内に終了しなかった。これより事業期間を次年度まで延長し、未使用額を論文投稿・リバイス対応のための実験に用いることにした。
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