2018 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎の形成におけるセリンプロテアーゼKLK6の役割の解明
Project/Area Number |
18K16045
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
飯沼 晋 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70516533)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 皮膚バリア / 角化細胞 / セリンプロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではKLK6がアトピー性皮膚炎の病態形成に与える影響とそのメカニズムについてKLK6ノックアウト(KO)マウスを用いた研究により明らかにすることを目的とする。 最初に野生型マウスとKLK6 KOマウス皮膚を比較し、正常皮膚におけるKLK6の機能を解析した。増殖マーカーであるKi67の免疫染色を行ったところ、野生型マウスと比較してKLK6 KOマウス表皮ではKi67陽性細胞数が有意に低下していた。次に表皮細胞の分化マーカーであるフィラグリン、インボルクリン、ロリクリンの免疫染色を行ったところ、2つのマウス群の表皮で発現に差異は見られなかった。以上の結果から正常表皮においてKLK6は表皮細胞の増殖に寄与する一方で、分化には影響を与えないことが示唆された。 次にアトピー性皮膚炎のマウスモデルとしてオキサゾロン誘発皮膚炎モデルを作成した。過去の報告に基づき、感作後にマウス耳介にオキサゾロンを反復塗布することにより耳介腫脹が誘発され、病理組織学的にも表皮肥厚や炎症細胞浸潤が確認された。KLK6の免疫染色を行ったところ、オキサゾロン誘発皮膚炎で肥厚した表皮上層にKLK6の発現が誘導されることが明らかになった。このことはアトピー性皮膚炎患者の表皮でKLK6の発現が増加しているという過去の報告と一致していた。 さらに野生型マウスとKLK6 KOマウスの耳介にオキサゾロン誘発皮膚炎を誘導した。2つのマウス群でオキサゾロンに誘発された耳介腫脹を比較したところ、野生型マウスと比較してKLK6 KOマウスでは耳介腫脹が有意に減少していた。このことからKLK6はオキサゾロン誘発皮膚炎の増悪に寄与することが明らかになった。以上の結果からKLK6がアトピー性皮膚炎においても皮膚炎の増悪に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アトピー性皮膚炎のマウスモデルとしてオキサゾロン誘発皮膚炎モデルを作成した。過去の報告に基づき、感作後にマウス耳介にオキサゾロンを反復塗布することにより耳介腫脹が誘発され、病理組織学的にも表皮肥厚や炎症細胞浸潤が確認された。一方で皮膚炎の程度にマウス間でばらつきが見られ、アトピー性皮膚炎のマウスモデルの確立に時間を要した。手技の検討により再現性よく皮膚炎が誘導され、安定した結果が得られるようなった。
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Strategy for Future Research Activity |
皮膚バリア機能障害時のKLK6を含むKLKsの発現およびKLK6の皮膚バリア機能に与える影響を検討する。テープストリッピングやアセトンは皮膚バリア機能障害を引き起こすことが知られている。野生型マウス皮膚にこれらのバリア機能障害を加えることで、KLK6を含むKLKsの発現が変化するかを定量的PCR、ウエスタンブロット法、免疫染色を行い解析する。さらに野生型マウスおよびKLK6ノックアウトマウス皮膚においてテープストリッピングやアセトンにより皮膚バリア機能障害を惹起する。その後、経時的にtransepidermal water loss (TEWL)を測定し、野生型マウスとKLK6ノックアウトマウスで皮膚バリア機能に差異が見られるか解析する。また経時的に皮膚を回収し、皮膚バリア機能障害時の2次的な皮膚炎に組織学的に差異が見られるかを解析する。
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Causes of Carryover |
アトピー性皮膚炎のマウスモデルとしてオキサゾロン誘発皮膚炎モデルを作成したが、皮膚炎の程度にマウス間でばらつきが見られ、アトピー性皮膚炎のマウスモデルの確立に時間を要した。このことにより、野生型マウスのオキサゾロン誘発皮膚炎におけるKLK6の発現解析(定量的PCR、ウエスタンブロット法、免疫染色)および野生型マウスとKLK6ノックアウトマウスにおけるオキサゾロン誘発皮膚炎の比較解析(フローサイトメトリーによる各種炎症細胞浸潤の評価、ELISAによる炎症性サイトカインの発現およびマイクロアレイによる網羅的な解析)を予定していたが、これらの実験に遅れが生じた。手技の検討により再現性よく皮膚炎が誘導され、安定した結果が得られるようなったため、次年度にこれらの実験に必要な物品、試薬の購入に充てる予定である。
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