2018 Fiscal Year Research-status Report
乾癬におけるProgranulinの作用機序の解明
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18K16056
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
水谷 陽子 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (60759950)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | psoriasis / Progranulin / Atsttrin |
Outline of Annual Research Achievements |
乾癬は青年から中年に好発する炎症性角化症の1つであり、表皮の炎症と角化細胞のターンオーバーの亢進により、全身に厚い銀白色の鱗屑を慢性的に繰り返す難治性の疾患で、その病態はまだ不明な点も多い。Progranulin(PGRN)は好中球由来エラスターゼなどにより分解されるGranulin(GRN)に分解される糖タンパクであるが、PGRNとGRNはそれぞれ抗炎症作用、起炎性作用を持つことが知られている。とくにPGRNは表皮細胞にも発現していることが知られているため、炎症性角化症においてPGRNの発現と役割とPGRNのアナログであるAtsttrinを用いた新規の乾癬治療の開発につなげるための基礎的なデータ収集を目的とした。 本年度の研究は血清中のPGRNと各種炎症性サイトカインを測定し、乾癬の病型、治療による変化などを検討することであった。PGRNの測定に先立って乾癬患者においてその炎症の程度を定量的に測定するために、すでに一部の報告がある炎症性サイトカイン(IL-17、IL-22、IL-23、TNF-α)を測定することとした。本研究に関して当施設の倫理委員会の承認を得た後に、同意を得られた乾癬患者(尋常性乾癬、乾癬性紅皮症)より血清を採取し、ELISA法にてそれぞれの測定を行った。 乾癬性紅皮症患者では、IL-17、IL-22、TNF-αのいずれも治療前を比べて治療後に値が低下していることが確認できた。その一方で尋常性乾癬患者においては、治療前後でいずれも臨床的に病勢を評価するPASIスコアとの相関は認めなかった。またIL-23に関しては、すべ他の患者において測定感度以下であった。 以上から血清中の複数の炎症性サイトカインが一部の乾癬患者において、病勢を反映するマーカーとなる可能性を示すデータが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、乾癬性紅皮症患者において、血清中のIL-17、IL-22、TNF-αが治療前と比較して治療後に低下しており、治療効果を客観的に判断するマーカーとなり得る知見が得られた。その一方で、尋常性乾癬患者においては治療前後でいずれも臨床的に病勢を評価するPASIスコアとの相関は認めなかったため、さらに症例数を増やしたデータセットで再検討を行う予定としている。さらに当初の研究計画であったIL-8、IFN-γについても測定を予定している。IL-23に関してはすべての患者において測定感度以下であったため、使用キットの変更や高感度ELISAでの評価を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目標であるPGRNとGRNの評価であるが、乾癬患者の組織における局在と発現量との比較を同時に予定しており、該当する患者より血清、病理組織の収集を行っている。さらに近年ではTNFR2の発現も乾癬の病態に関わっていることが報告されているため、合わせて病理組織標本での発現量と局在について検討する。 本年度に得られた、炎症性サイトカインが治療効果判定のマーカーになり得る可能性については、引き続き患者血清での知見を蓄積して、実際にマーカーとして使用できるかどうかを検討する。 研究計画における培養細胞を用いた研究では、表皮培養細胞にPGRN、エステラーゼ、Atsttrinを添加し、細胞増殖について検討を行うとともに、患者血清で測定した炎症性サイトカインについて測定を行い、臨床結果との比較と評価を行う。さらにPGRN添加時には、細胞内でErk経路が活性化することが知られているが、表皮細胞では報告がないため、それらのErk経路の活性化について、ウェスタンブロット法にて確認する。
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