2018 Fiscal Year Research-status Report
網羅的機能解析技術を用いた白血病必須クロマチン制御機構の解明と新規治療標的の同定
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18K16089
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
仙波 雄一郎 九州大学, 大学病院, 医員 (90816787)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 白血病 / クロマチンリモデリング因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人急性骨髄性白血病 (AML)は、ごく一部の病型を除いて未だ治療成績が不良であり、新規治療法の開発が喫緊の課題である。 昨今の白血病ゲノム解析から、転写因子の機能異常が白血病発症に直接関与することが明らかになってきたが、その細胞分化制御の分子機構は未だ不明な点が多い。申請者は、特にクロマチンリモデリング因子による転写制御に着目し、正常幹細胞では転写因子がクロマチンリモデリング因子と共役し、細胞分化制御をおこなっていることを明らかにしてきた。本研究の目的は、正常造血細胞の分化、AML細胞の維持に重要なクロマチンリモデリング因子の同定とその機能解析である。2018年度に申請者は、CRISPR-Cas9システムによる全ゲノムスクリーニングの実験系を確立した。まず、AML細胞にCas9ヌクレアーゼを強発現したAML細胞株 (Cas9AML細胞) を2系統樹立した。本研究では、マウスの20,611遺伝子及び1,175のmiRNAを標的とし、1遺伝子あたり6つの異なるsgRNAがデザインされたGeCKO sgRNAライブラリを用いた。7x107個のCas9AML細胞にsgR NAライブラリを感染させ、約14日培養後に、各sgRNAの全sgRNAリード数に占める割合の変化をMAGeCKプログラムで解析した。その結果、腫瘍抑制因子Trp53を標的とするsgRNAが最もenrichし、Trp53タンパク質発現を負に制御するMdm2及びMdm4を標的とするsgRNAはdropoutした。このことから、AML細胞増殖の表現型に対する遺伝子スクリーニングが可能であることが示された。さらに、このスクリーニングの結果から、我々はAML細胞増殖に必須であるエピゲノム制御関連遺伝子、腫瘍抑制因子として機能するエピゲノム制御関連遺伝子を抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に本研究の基盤となるCRISPR-Cas9全遺伝子スクリーニングの実験系を確立した。複数の細胞株を用いて、ウイルスライブラリ感染、培養、ライブラリ作成に至るまでの工程の最適化を行い、スクリーニング結果の解析についても複数の解析パイプラインを試し、適切な評価が行えるよう最適化を行った。その結果、複数の細胞株および複数の実験で高い再現性が確認された。さらに、複数の薬材投与下でのスクリーニングの予備実験も行い、こちらでも耐性遺伝子の抽出において再現性が確認されている。以上のように2018年度はCRISPR-Cas9スクリーニング実験系の確立により、白血病病態形成に関連する遺伝子の抽出が可能となり、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は2018年度のスクリーニング結果をin vitroおよびin vivoでの二次スクリーニングにより追試し、AML細胞増殖に必須であるエピゲノム制御関連遺伝子を絞り込む。候補遺伝子については個別にノックアウト細胞株を作成し、RNA-seq, ChIP-seq, ATAC-seqを用い、白血病病態形成に寄与するメカニズムの解明に繋げる。さらに、抽出した遺伝子についてはヒト細胞株、PDXモデルで治療効果について検証し、白血病患者ゲノムおよび発現量情報の解析を行う。
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