2018 Fiscal Year Research-status Report
形質細胞特異的分子を標的とした多発性骨髄腫の治療開発
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18K16092
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
河野 和 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70776244)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / プリン代謝経路阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでにAMPD1 (adenosine monophosphate deaminase 1)というAMPをIMPに変換し、NH3を産生する経路を触媒するプリン分解経路の酵素が正常形質細胞と骨髄腫細胞に特異的に発現することを見出し、AMPD1阻害が多発性骨髄腫に対する新たな治療法になりうるかを検討した。骨髄腫細胞株に既報(Admyre T et al. Chemistry & Biology. 2014; 21: 1486-1496.)のAMPD1阻害剤(CPD#3, CPD#4)をin vitroで添加したところ、解析した全ての骨髄腫細胞株で増殖抑制効果を認めた。AMPD阻害剤の骨髄腫細胞株に対する増殖抑制効果は各骨髄腫細胞株のAMPD1発現量と相関することが明らかになった。AMPD1阻害剤は骨髄腫細胞株にG0/G1期での細胞周期の停止を誘導することで増殖抑制効果を発揮した。AMPD1阻害剤は骨髄腫細胞株だけでなく、患者由来の骨髄腫細胞に対しても細胞死を誘導し、同時に正常リンパ球への障害は認められず、骨髄腫細胞特異的に作用することが明らかになった。我々は骨髄腫細胞株においてAMPD1発現が低酸素条件下で増強することをマイクロアレイデータ解析、リアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法で確認した。骨髄腫細胞株に対してAMPD1阻害剤を正常酸素分圧と低酸素条件化で作用させたところ、低酸素条件下でより細胞増殖抑制効果を発揮することが明らかになり、AMPD1阻害による抗骨髄腫効果は骨髄腫細胞が生存している低酸素状態にある患者骨髄においてより有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AMPD1阻害剤を用いてin vitroで骨髄腫細胞に対する抗腫瘍効果を検証したところ、骨髄腫細胞株と患者由来の骨髄腫細胞いずれにおいても抗腫瘍効果が確認された。また、AMPD1阻害は骨髄腫細胞以外の正常リンパ球に対しての毒性は指摘できなかったため、今後のより有効性の高いAMPD1阻害剤の合成やin vivoでのAMPD1阻害剤の投与に際して基礎となる研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
AMPD1はAMPをIMPに変換し、NH3を産生する経路を触媒するプリン分解経路の鍵酵素である。したがってAMPD1阻害剤による骨髄腫細胞の細胞死には細胞内代謝経路の変化や障害が関与している可能性が極めて高いと考えられる。したがって、AMPD1阻害剤を添加した骨髄腫細胞のメタボローム解析を行い、AMPD1阻害に伴う骨髄腫細胞内の代謝物質や代謝経路の変化を網羅的に解析する予定である。また、我々がこれまでに使用してきたAMPD1阻害剤は100 uMの濃度より骨髄腫細胞に対して抗腫瘍活性を発揮する。AMPD1阻害剤による多発性骨髄腫の治療を実現するためにはより低濃度で抗腫瘍効果を発揮する薬剤が必要であり、既報のAMPD1阻害剤の構造をもとにより活性の高い薬剤の合成を行っている。合成された薬剤の中で活性の高いものをin vivoの実験系で抗骨髄腫作用や有害事象の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度中にAMPD1阻害剤を用いた動物実験の一部を開始する予定であったが、より低濃度で抗腫瘍効果を発揮する活性の高いAMPD1阻害剤の合成を行っている最中であり、合成された薬剤の中で活性の高いものを動物実験で使用する方針としたため、本年度使用予定の動物関連費用を次年度に使用することとなった。
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