2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K16094
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
齋藤 祐介 宮崎大学, 医学部, 講師 (20585674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 白血病 / 解糖系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は白血病細胞のエネルギー供給源を阻害し、白血病増殖に有利な環境を阻害すると同時に宿主の栄養状態の改善を可能にする新しいがん支持療法ならびに治療コンセプトの確立を目的としている。白血病細胞がエネルギー源として利用可能な糖質を同定するため白血病細胞株10種類 (K562, U937, KT1, Jurkat, Ramos, THP1, MOLM1, MOLM13, MOLM14, Nomo-1) と患者検体4検体を用いて解析を行った。まず、白血病細胞株には培養条件でグルコース飢餓状態においても長期間生存が可能なグルコース飢餓耐性株と速やかに死滅するグルコース飢餓感受性株が存在することを見出した。次にグルコースの代替として代謝可能な糖質を同定するため、各種糖質を添加した短期的な解糖系活性を細胞外フラックスアナライザーにより、長期的な生存率をMTTアッセイで評価した。白血病細胞株において解糖系のエネルギー源として利用可能な糖質はグルコース、フルクトースそしてマンノースのみであった。マンノースはグルコースと同じトランスポーターから細胞内に取り込まれMannose-6 phosphate isomerase (MPI) によりフルクトースに変換され解糖系で利用される。我々はマウス白血病細胞とヒト白血病細胞株でMPI発現抑制株を作成し, MPI抑制株では細胞増殖能が抑制されること、マンノース添加による解糖系エネルギー産生が低下することを明らかにした。さらに驚くべきことにMPI抑制株ではマンノースを添加することで通常のグルコース代謝も抑制することが明らかとなった。2018年度の研究成果として白血病細胞の解糖系経路を完全に抑制するためにはグルコースに加えてフルクトースとマンノース代謝を阻害する必要があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度当初の研究計画であるI. 高グルコース輸液が白血病細胞の増殖ならびにエネルギー代謝に与える影響の解析については、白血病モデルマウスと輸液療法システムの構築に時間を要したため2019年度の解析に変更した。II. 白血病細胞が増殖する骨髄液での代謝基質の同定については患者検体が集まった時点で解析を行う計画とした。そのため2019年度の解析項目を前倒しして2018年度に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
I. 高グルコース輸液が白血病細胞の増殖ならびにエネルギー代謝に与える影響の解析:白血病マウスモデルの作製: MLL-AF9: 急性骨髄性白血病 (AML) モデルマウス , BCR-ABL:慢性骨髄性白血病 (CML)モデルマウス, ICN-1:急性リンパ性白血病 (ALL)モデルマウスの頸静脈にカテーテルを留置し、高グルコース製剤 (グルコース 17.5%)を1ml /24時間で3-4週間投与する。2週間毎に白血病マウスの末梢血を採取し、コントロール群と高グルコース群の白血病細胞数を比較する。4-6週の白血病発症後にマウスを安楽死させ、生存曲線を比較し高グルコース製剤が白血病の予後に与える影響を解析する。また、骨髄より白血病細胞を分離し、白血病細胞数や白血病幹細胞の割合、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析、細胞外フラックスアナライザーを用いたエネルギー代謝解析、LC/MSによるメタボローム解析を行うことで高グルコース製剤が白血病細胞の遺伝子発現やエネルギー代謝に与える影響を明らかにする。 II. 白血病細胞が増殖する骨髄液での代謝基質の同定:骨髄血漿成分中の代謝基質測定: 急性白血病 (AML,ALL)と診断された患者の骨髄液から血漿成分を採取し、メタボローム解析を行う。寛解後骨髄の血漿と比較して診断時の骨髄の血漿で有意に低下している代謝産物は白血病細胞が特異的に消費しているエネルギー基質の候補である。 III. 白血病代謝を抑制する輸液製剤の作製と抗白血病効果の検討:白血病に代謝されない糖質を含んだ輸液製剤を作製し、白血病の増殖抑制可能であるか検討する。さらに、グルコース、フルクトースおよびマンノース代謝を標的とする新規治療薬開発のための基礎研究を行う。
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Causes of Carryover |
旅費への支出が少なかったため差額が生じた。 2019年度研究成果報告のための旅費として使用する。
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