2018 Fiscal Year Research-status Report
成人T細胞白血病/リンパ腫を対象としたTCR遺伝子導入Tリンパ球療法の確立
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18K16095
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
正木 彩子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40648044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 抗腫瘍免疫 / 成人T細胞白血病/リンパ腫 / TCR遺伝子改変T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患である成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)はヒトTリンパ向性ウィルス(HTLV-1)によって引き起こされる末梢性T細胞リンパ腫で、ATL細胞にはHTLV-1が感染している。本研究は、ATL細胞に発現しているHTLV-1由来の蛋白やがん精巣抗原を標的とした、新しい抗腫瘍免疫療法の確立を目的としている。 平成30年度には、TCR遺伝子導入用レトロウイルスベクターを用いて、健常人末梢血由来T細胞から、NY-ESO-1特異的TCR遺伝子改変T細胞(TCR-T)の製造手法を確立した。このNY-ESO-1特異的TCR-T が、in vitroにおいてNY-ESO-1特異的エピトープペプチドに対して反応することを確認し、さらに、NY-ESO-1陽性細胞株を認識してサイトカインを産生することを確認した。 ATL患者およびHTLV-1無症候性キャリアの末梢血中のHTLV-1 Tax特異的CTLにおけるPD-1の発現が、特異的CTLのサイトカイン産生の減弱と関連していることを証明した(Cancer Sci. 2018;109:2383-90)。これは、HTLV-1特異的CTLにおけるPD-1の発現が機能低下と関連していることを、培養細胞ではなく、実際の患者生体内の細胞で示した結果である。同様に、TCR-TにおいてもPD-1発現は機能低下と関連する可能性があり、TCR-Tと免疫チェックポイント阻害薬の併用はATLにおいて効果が期待される。 今後は、①ATLモデルマウス生体内でのautologousな系を用いた特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の検証、②免疫チェックポイント阻害薬やIDO阻害剤との併用によるNY-ESO-1特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の増強効果の検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
高度免疫不全マウスであるNOD/Shi‐scid, IL‐2Rγnull (NOG)マウスをレシピエントとし、患者由来新鮮造血器腫瘍細胞を生着させ、ドナー患者の臨床像を忠実に再現したNOG/造血器腫瘍モデルマウスの作製手法は確立している。TCR遺伝子導入用レトロウイルスベクターを用いたNY-ESO-1特異的TCR-Tの製造手法も確立しており、NY-ESO-1特異的エピトープペプチドに対する反応のみならず、NY-ESO-1陽性細胞株を認識しサイトカインを産生することも確認済である。患者由来細胞については、現在、HLAが適合し、かつNY-ESO-1陽性である症例を検索している。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでのNY-ESO-1特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の検証、および免疫チェックポイント分子に対する抗体薬やIDO阻害剤との併用によるNY-ESO-1特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の増強の検証については、まずは細胞株を用いた検討を行う。患者由来細胞を用いた検証については、HLAが適合し、かつNY-ESO-1陽性である症例を発見し次第施行する予定である。
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Causes of Carryover |
①ATLモデルマウス生体内でのautologousな系を用いた特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の検証、②in vitroでのNY-ESO-1特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の検証、③免疫チェックポイント分子に対する抗体薬やIDO阻害剤との併用によるNY-ESO-1特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の増強を行うことを目標に研究を実施しているが、現在、HLAが適合し、かつNY-ESO-1陽性であるATL症例を検索しているものの、該当する症例が得られず、計画に遅れが生じている。このため、前年度の物品費が予定よりも少額となった。目的とする症例が得られれば前年度に施行していなかったATLモデルマウス生体内でのautologousな系を用いた特異的TCR-Tの抗腫瘍活性の検証を実施するため、平成30年度に施行予定であった実験を平成31年度に予定していた実験と並行して行うため、物品費が増加すると考えられる。
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Research Products
(8 results)