2020 Fiscal Year Research-status Report
成人T細胞白血病/リンパ腫を対象としたTCR遺伝子導入Tリンパ球療法の確立
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18K16095
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
正木 彩子 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (40648044)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TCR遺伝子導入Tリンパ球 / IDO1 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患である成人T細胞白血病(ATL)を対象とした新しい抗腫瘍免疫療法の開発に関する研究を実施している。 すでに、TCR遺伝子導入用レトロウイルスベクターを用いて健常人末梢血単核球からNY-ESO-1に対して特異的に反応するTCR遺伝子導入Tリンパ球(TCR-T)を作成し、これがin vitroにおいてNY-ESO-1を発現する細胞株にアポトーシスを起こさせることを、annexin Vの発現を検出することにより確認している。 近年、抗腫瘍免疫抑制機構の一つとしてトリプトファン代謝は注目されており、トリプトファンをキヌレニンに分解する経路の律速酵素であるindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)は、代謝産物の蓄積もしくは局所でのトリプトファンの枯渇により、T細胞の増殖抑制やアポトーシスの誘導を引き起こし、腫瘍細胞が宿主免疫を回避するのに適した微小環境を形成すると考えられている。IDO活性が上昇すると、トリプトファンは分解されて減少し、キヌレニンが産生されて増加する。低トリプトファン、高キヌレニンの環境下において、NY-ESO-1特異的TCR-TのNY-ESO-1を発現するATL細胞株に対する細胞障害活性が低下する傾向にあることをin vitroで確認した。 申請者らはこれまでに、成人T細胞白血病やホジキンリンパ腫において、IDO活性の上昇が全生存率の低下と関連することを報告してきているが、濾胞性リンパ腫においても同様にIDO活性の上昇が全生存率の低下と関連することを見出し、論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
治療の標的となる、特定のHLAを有し、かつNY-Eso-1を発現している細胞株ならびに患者由来細胞の収集に時間を要している。COVID-19感染症拡大に伴い、海外からの様々な物品の輸入に遅れが生じ、入手に時間がかかるようになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
NY-ESO-1特異的TCR-Tの作成方法はすでに確立されたため、今後はこれの細胞障害活性の増強を試みる。ニボルマブ、モガムリズマブ、エパカドスタットの添加による、NY-ESO-1特異的TCR-Tの細胞活性増強を、ATL細胞株をtargetとし、in vitroで確認する。ATL患者のHLAおよびATL腫瘍細胞のNY-ESO-1発現を確認し、HLAが適合しかつNY-ESO-1を発現している患者由来ATL細胞の入手を試み、これをtargetとしてNY-ESO-1特異的TCR-Tの細胞障害活性をin vitroで確認する。また、Targetとなる患者由来ATL腫瘍細胞を用いて、モデルマウスを作成し、in vivoでNY-ESO-1特異的TCR-Tの細胞障害活性を確認する。
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Causes of Carryover |
治療の標的となる、特定のHLAを有し、かつNY-Eso-1を発現している細胞株ならびに患者由来細胞の収集に時間を要しており、当初の計画から遅れを生じている。またCOVID-19感染症拡大に伴い、海外からの様々な物品の輸入に遅れが生じ、入手に時間がかかるようになっており、実験の実施に遅れを生じている。
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