2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K16098
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
増渕 菜弥 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (00791641)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨髄増殖性腫瘍 / Calreticulin / 分子シャペロン / サイトカイン受容体 / 翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィラデルフィア染色体陰性の骨髄増殖性腫瘍(MPNs) は、造血幹細胞に後天的な遺伝子変異が生じ、血球の異常増加や骨髄の線維化を呈する造血器腫瘍である。MPN患者はQOLの著しい低下を招く脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが高く、時に急性白血病へと病型移行する。治療関連死のリスクを伴う造血幹細胞移植以外には根本的な治療法が無い上に、高齢の発症者が多いことなどから移植適応症例はごく僅かであり、発症メカニズムの解明による有効な治療戦略の確立が求められている。我々はこれまでに、MPN 患者の一部に共通して見出されるCalreticulin (CALR)変異遺伝子産物がトロンボポエチン受容体のMPLを恒常的に活性化し、MPNを発症させること、さらに前年度には、変異型CALRがホモ二量体を形成し、細胞内の分泌経路でMPLのN型糖鎖を認識して結合することで細胞の腫瘍化を引き起こしていることを明らかにした。本研究では、変異型CALRによるMPLの活性化機構を明らかにすることで、MPNに対する治療標的部位を同定し、新規の治療戦略を構築することを目的としている。本年度は、この変異型CALRによるMPL活性化が、変異型CALRとMPLの結合が起こる細胞内で起きているのか、正常なMPLと同様に細胞表面で起きているのか検討を行った。その結果、変異型CALRの種類によって細胞表面のMPLの挙動に違いが見られたが、変異型CALRを発現している細胞では、MPLの活性化が主に細胞表面で生じていることを明らかにした。さらに変異型CALRとMPLを過剰発現させた細胞で、細胞表面の変異型CALRとMPLの相互作用がみられた。これらのことから、変異型CALRは細胞内の分泌経路でMPLのN型糖鎖を認識して結合し、MPLは細胞表面で変異型CALRと相互作用して活性化することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、変異型CALRによるMPLの活性化が細胞表面で起きること、細胞表面で変異型CALRとMPLが相互作用していることを明らかにしたことから、変異型CALRによるMPLの活性化機構の解明は、順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
変異型CALRによるMPL活性化が結合の起こる細胞内ではなく細胞表面であったことから、MPLは細胞表面特異的に変異型CALRと相互作用して活性化する修飾を受けていると考えられる。そこで今後は、細胞表面に局在しているMPLを回収し、細胞内のMPLと比較してその糖鎖修飾を質量分析法などを用いて明らかにする。さらにその特異的な修飾に関与する酵素等の発現や活性をshRNAや阻害剤を用いて低下させた時に、変異型CALRによるMPL活性化が抑制されることを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究計画のうち、細胞表面でのMPLの活性化メカニズムの解析が予想外に進行し、質量分析法による解析を行わなかったため 余剰が発生した。次年度、MPLのN型糖鎖修飾が生じていることを質量分析法により解析するために使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] 変異型CALRはMPLと分泌経路で相互作用し細胞表面で活性化を引き起こす2019
Author(s)
増渕 菜弥, 荒木 真理人, 楊 印杰, 林 英里奈, 今井 美沙, 枝廣 陽子, 弘中 由美, 水上 喜久, 木原 慶彦, 小池 正人, 大坂 顯通, 小松 則夫
Organizer
第81回日本血液学会学術集会
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