2019 Fiscal Year Research-status Report
Bリンパ球が誘導する免疫寛容におけるクロマチン構造調整蛋白SATB1の機能解明
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18K16115
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小澤 孝幸 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90815474)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Bリンパ球 / 免疫発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は免疫寛容を誘導するIgD陽性Bリンパ球の機能調整、遺伝子発現調整においてSATB1の機能的役割を分子レベルで明らかにすることを目的とする。 2018年度までの実験にて、B細胞特異的SATB1ノックアウトマウス(KOマウス)において、IgD陽性B細胞が増加するほか、B cell receptorの刺激時にCD83、CD86の発現障害がおこることが分かった。IgD、CD83、CD86はいずれもB細胞が抗原に暴露されたときに抗原提示をするために誘導される表面マーカーである。これらのことから、SATB1が脾臓におけるB細胞の抗原提示能に関与している可能性を考え、下記の実験を行った。 (1)作成していたSATB1レポーターマウスをフローサイトメトリーにて再度解析した結果、脾臓B細胞において、SATB1はNaive B 細胞で上昇しているのに対し、活性化B細胞~Germinal Center B細胞において低下していくことが分かった。また、レポーターマウスのSATB1陽性分画Naive B細胞、SATB1陰性Naive B細胞をそれぞれ抗IgM抗体と共培養すると、SATB1陽性分画のNaive B 細胞のみがCD86、MHC ClassⅡの発現をすることがわかった。 (2)Bリンパ球特異的SATB1KOマウスにおいて抗IgM抗体を脾臓B細胞に添加し、その表面マーカーの変化を確認したところ、CD83, CD86の発現が障害されることに加えて、MHC class2の発現も障害されていることがわかった。 末梢血中のサイトカイン濃度(IgMなど)を測定しているが、KOマウスとWild typeのマウスでは有意な差は認められなかった。 上記の結果は、2019年ヨーロッパ血液学会、日本血液学会、日本血液学会国際シンポジウム、日本免疫学会で発表した。また、2020年の日本血液学会でも発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初IgDに着眼して実験を進めてきたが、Naive B細胞の抗原提示能にSATB1がかかわっているという可能性が示唆されており、解析対象となるB細胞をIgD陽性B細胞からNaive B細胞に変更する必要が出てきた。 今までのIgDで得られていた知見がNaive B細胞の解析においても同じ結果が得られるか、判断するために再実験が必要であり、そのため、実験はやや遅れている、と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
レポーターマウスおよびKOマウスの解析から、SATB1がCD83, CD86, MHC class 2の発現制御にかかわっている可能性が高い。CD86および、MHC2の発現量調節の一端は、MARCH1というubiquitin ligaseがCD86とMHC2の分解を行うことによってなされているが、膜型CD83(mCD83)はMARCH1を抑制する作用があり、結果的に分解されなくなったMHC2とCD86の発現上昇を促す、ということがわかっている。 KOマウスにおいてMARCH1を含めた、CD83, CD86, MHC class2の発現に関与する遺伝子の発現解析が必要である。また、既に作成済みであるFlagタグ付きビオチン化SATB1発現マウスを用いた、Chip Seqence assayを行うことでSATB1が制御しているCD83, CD86, MHC class2の関連遺伝子が何であるかを同定する。
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Research Products
(4 results)