2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞外ヌクレオチド受容体による好塩基球機能調節メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K16135
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
中野 学 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10436016)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 好塩基球 / 細胞外ヌクレオチド / cAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞外ヌクレオチドの好塩基球機能に対する影響を明らかにすることである。申請者はこれまでに、好塩基球がUTPを自然分泌していることや細胞外UDP受容体であるP2Y6受容体シグナルが好塩基球のFcεRI依存的活性化に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。しかしながら、好塩基球におけるP2Y6受容体シグナルの詳細や、好塩基球が細胞外ヌクレオチド分解能を有するか不明である。 2018年度は、好塩基球におけるP2Y6受容体シグナルを明らかにし、FcεRI依存的脱顆粒に及ぼす影響の機序解明を行った。まず、ヒト末梢血好塩基球をUDPで刺激し、Gタンパク共役型受容体のセカンドメッセンジャーの変化を確認した。UDP刺激によりcAMP量の増加と細胞内カルシウム濃度の上昇が確認され、この細胞内カルシウムの上昇はP2Y6受容体阻害剤、cAMP合成酵素阻害剤、カルシウムキレート剤で抑制された。このことは、好塩基球のP2Y6受容体シグナルは、cAMPを介して細胞内カルシウム濃度を調節していることを示唆する。 次に、P2Y6受容体阻害剤と培養した好塩基球をFcεRI依存的活性化刺激し、IP3および細胞内カルシウムの濃度変化を確認したところ、P2Y6受容体阻害剤と培養した好塩基球では、FcεRIシグナルのIP3が小胞体を刺激するが小胞体貯蔵カルシウムの細胞内放出が行われていないことを示している。 FcεRI依存性脱顆粒には、小胞体内カルシウムの細胞内放出が必要である。これらの結果は、P2Y6受容体刺激がcAMPを介し、小胞体カルシウムの貯蔵に関与することでFcεRI依存性脱顆粒に寄与している可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の当初の目標は、好塩基球のP2Y6受容体の細胞内シグナルを明らかにするとともに、FcεRIシグナルに及ぼす影響を確認することであった。P2Y6受容体シグナルは、予想とは異なる結果となったが目標通り確認できた。FcεRIシグナルとP2Y6受容体シグナルの関連性について、当初はリン酸化タンパク質により検討する予定だったが、細胞数、タンパク量などの問題により行わず、細胞内カルシウム濃度測定とIP3測定により行った。当初予定していたリン酸化タンパクの検出は、今後必要であると考えるが、今回の方法でも、検討するために必要な結果が得られており、全体的な進捗状況としてはおおむね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は細胞内シグナルを検討したが、好塩基球がUDPを産生しP2Y6受容体を刺激しているか不明である。先行研究で、好塩基球がUTPを分泌していることを明らかにしているので、2019年度は、好塩基球の細胞外加水分解酵素の発現、好塩基球のUTP加水分解、加水分解により産生されたUDPが好塩基球の活性化に影響を及ぼすか確認する。
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