2018 Fiscal Year Research-status Report
解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM2による炎症性疾患の制御
Project/Area Number |
18K16136
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
白井 剛志 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20646997)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞内代謝 / 膠原病 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞特異的に発現するとされてきたピルビン酸キナーゼM2(PKM2)は炎症細胞にも発現し、PKM2の発現とそのオリゴマーの変化が直接的に細胞の炎症性を制御する可能性があると考えられる。このがん細胞に類似した細胞内代謝を標的として炎症制御を試みることで、膠原病をはじめとする炎症性疾患、間質性肺炎や炎症性腸疾患、糸球体腎炎、動脈硬化症など多くの炎症性疾患において、正常細胞に対する影響を最小限とする画期的な治療法となることが期待される。本研究では、PKM2の低分子活性化剤を用いてPKM2オリゴマーの免疫細胞における機能をin vitroで検討するとともに、炎症性疾患動物モデルを用いてPKM2が炎症性疾患における新規標的分子となることをin vivoで検証している。まず、ヒト単球由来マクロファージを、インターフェロンγ/リポ多糖体を用いてM1マクロファージあるいインターロイキン(IL)-4、13を用いてM2マクロファージに分化させた。分化時にPKM2低分子活性化剤を用いてPKM2の発現を修飾し、各分化マクロファージにおけるエフェクター機能として、炎症性サイトカイン、ケモカイン、活性酸素の分泌能を定量PCR、フローサイトメトリーを用いて解析し、PKM2により制御されるエフェクター機能の解析を行った。更に、SLEモデルマウス(MRL/lprマウス)におけるPKM2の解析を行い、in vivoにおけるPKM2低分子活性薬の効果判定を行っている。結果として、PKM2低分子活性薬の投与により、モデルマウスの病的細胞であるlpr細胞数に変化がでることが確認され、今後炎症病態へのメカニズムを検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PKM2低分子活性化剤によるモデル動物の抗炎症性の条件を検討している
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Strategy for Future Research Activity |
PKM2は解糖系酵素の一つであるが、酵素としての機能以外に細胞の生存や炎症制御に関わることが、近年は他のグループよりも報告されてきている。申請者は先んじて、PKM2の前炎症性サイトカイン産生など、炎症に関わる機能をヒトマクロファージで証明し、さらに免疫チェックポイントであるPD-L1の発現制御にも関わっていることを報告している。すなわち、複数の炎症細胞においてPKM2が炎症を制御していることが示唆され、その標的細胞やシグナリングの解析を行うことで、細胞内代謝と炎症の関連をより詳細に解析していく必要がある。特にT細胞は、自己免疫疾患や炎症性疾患において中心的役割を果たしている。T細胞の活性化時にもPKM2の出現が確認されており、T細胞の活性化におけるPKM2の働きについても今後検討していきたいと考えている。 細胞内代謝として、PKM2は解糖系酵素であるが、糖代謝以外にも脂質代謝やアミノ酸代謝に関わる可能性が考慮される。これらの相関は非常に複雑であるが、メタボローム解析など、代謝産物の測定を行っていくことで詳細なPKM2の炎症制御における寄与を解明していくことができると考えられる。 PKM2低分子活性化剤のin vivoでの使用における問題点はその半減期にあり、頻回の投与を必要とする。モデル動物においては、体内での炎症の発生から臓器傷害まで時間差があるため、どの点を標的とすべきであるかについての検討が必要となっている。PKM2の制御により、モデル動物において病的細胞の出現が影響を受けることが明らかになっており、より早期からの使用により臓器傷害の進展を改善する可能性が考慮される。更に条件検討を行っていく必要がある。
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Causes of Carryover |
当教室内で共用できる試薬を主に使用することができたために次年度使用額が生じた。次年度は物品費に追加して使用していく予定である。
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[Presentation] Optimized Protocol for Extracorporeal Shock Wave Therapy on Digital Ulcers in Systemic Sclerosis2018
Author(s)
Tomonori Ishii, Yasushi Kawaguchi, Osamu Ishikawa, Hiromitsu Takemori, Naruhiko Takasawa, Hitoshi Kobayashi, Yuichi Takahashi, Hidekata Yasuoka, Takao Kodera, Osamu Takai, Izaya Nakaya, Tomomasa Izumiyama, Hiroshi Fujii, Yukiko Kamogawa, Yuko Shirota, Tsuyoshi Shirai et al.
Organizer
American College of Rheumatology
Int'l Joint Research
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