2018 Fiscal Year Research-status Report
eQTLデータベースを活用した新規関節リウマチ治療戦略の検討:CD83を焦点に
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18K16140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土田 優美 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90793597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / CD83 / ゲノムワイド関連解析 / eQTL |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲノムワイド関連解析(Genome wide association study: GWAS)によって、関節リウマチ(RA)と関連するリスク多型が同定されている。これらのリスク多型の多くは、タンパク質のアミノ酸配列には影響を与えず、特定の細胞種・特定の刺激条件下で遺伝子発現に影響を与え、疾患の発症に関与していると考えられている。そのため、遺伝子発現に影響を与える多型(expression quantitative trait locus: eQTL)を解析することで、リスク多型が、どの細胞でどのような遺伝子に影響を与えるか明らかにすることができ、病態生理の解明につながると考えられる。 申請者らは、日本人末梢血の免疫担当細胞のeQTLカタログを既に作成し(Nat Genet. 2017;49:1120-1125)、本研究においては、そのカタログとGWASの情報を統合することにより、関節リウマチの新たな治療ターゲットをなり得る候補分子を同定し、その機能解析を行っている。 今年度は、まずB細胞上のCD83に着目した。CD83遺伝子の近傍の遺伝子多型が、RAに関連することは以前から報告されており(Okada et al. Nat Genet 2012;44:511.)、今回のeQTLカタログを参照すると、このリスク多型は、B細胞上のCD83の発現を低下させる。公共データベースのデータを参照することにより、このeQTL効果は、B細胞特異的に、CD83遺伝子上流へのNFκBの結合が変化することによって生じると推測された。また、健常人末梢血において、リスク多型の有無によりB細胞分画に変化が見られ、CD83はヒトB細胞の分化に重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B細胞上のCD83に関しては、eQTL効果が他論文でも報告され(Thalayasingam et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:361-370.)、他の研究グループが着目している可能性も高いと考え、当初の研究計画は全て遂行する前に発表する方針とし、レターとして報告した(Tsuchida et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:361-370.)。 当初2019年度に予定していた刺激されたCD4陽性T細胞のeQTLデータベースの構築、および、それをもとにした他の候補分子の同定・機能解析については、当初の予定より早く進行し、データベースの構築は、ほぼ完了した。本データベースによると、関節リウマチにおけるメトトレキサート反応性と関連するリスク多型の一つは、活性化されたCD4陽性T細胞における遺伝子Xの発現に影響を与える。そのため、遺伝子Xが、関節リウマチの病態、メトトレキサートの作用に重要である可能性が推測される。遺伝子XのヒトCD4陽性T細胞における機能の報告は乏しく、現在siRNAなどにより試験管内でヒトCD4陽性T細胞における遺伝子Xの解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、刺激されたCD4陽性T細胞のeQTLデータベースから同定された、RA治療ターゲットの候補分子の機能解析を中心に行う予定である。 具体的な候補分子としては、まずは遺伝子Xに関する検討を継続する。 また、eQTLデータベースからは、RAのリスク多型は、刺激されたCD4陽性T細胞における遺伝子Yの発現に影響を与えると推測される。遺伝子Yは、RAの病態において、主に関節局所の滑膜線維芽細胞・マクロファージにおいて着目されていた分子であるが、CD4陽性T細胞においても重要である可能性も示唆される。今後、試験管内でCD4陽性T細胞における遺伝子Yの機能解析も行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費を節約したため次年度使用額が生じた。次年度の試薬購入に使用する予定である。
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[Presentation] Genetic perturbation of immunological gene expression in T cells under different polarizing conditions2018
Author(s)
Yumi Tsuchida, Mineto Ota, Kazuyoshi Ishigaki, Shuji Sumitomo, Kensuke Yamaguchi, Yasuo Nagafuchi, Haruka Tsuchiya, Hirofumi Shoda, Akari Suzuki, Kazuhiko Yamamoto, Yuta Kochi, Keishi Fujio
Organizer
日本免疫学会