2018 Fiscal Year Research-status Report
抗レトロウイルス療法下のHIV-1特異的T細胞の解析
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18K16181
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
近田 貴敬 熊本大学, エイズ学研究センター, 特任助教 (60749711)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | HIV-1潜伏感染細胞 / HIV-1特異的CTL / 抗レトロウイルス療法 / HIV感染症根治 / Shock and Kill / CTL反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、抗レトロウイルス療法(ART)中の感染者についてメモリーT細胞がどの程度保たれているのか、またそれらメモリーT細胞からHIV特異的CTLを誘導することができ、慢性感染時のCTLと同様の感染細胞傷害能力を保持しているかどうかの疑問を解明することを目的としている。 これまで我々のグループは、無治療慢性日本人HIV-1感染者のCTL反応と感染者の病態を解析することで、HIV-1コントロールに重要な役割を持つCTLを明らかにしてきた。その結果、合計15種類のHIV-1増殖抑制能を有するCTLを特定した。本年度ではこれら15種類のうち13種類を対象として、各エピトープに対するCTL反応をIFN-γ ELISPOT assayによって解析した。対象とした検体は、先行研究にて慢性感染時に何らかのCTL反応が確認されており、ART後に引き続き採血が可能であった18名の感染者から血液を収集した。収集した血液検体よりPBMCを分離しCTL反応を調べたところ、ART開始後数年経過しているものの18名中13名で、何らかのエピトープに対するCTL反応(>100 SFU / 1,000,000 PBMC)が認められた。ただし、慢性感染時より大きく減弱しており、もともと200 SFU程度のCTL反応であったエピトープに関しては、陽性反応が認められないものが多かった。また慢性感染時よりCTL反応が強く検出された検体が1名みられた。 本年度の成果により、長期にわたるARTにより抗原に即座に応答することのできるメモリーT細胞の数が予測通りに減弱していることが明らかとなった。ただ、慢性感染時にCTL反応が強かったものに関しては数多くの検体で陽性反応が認めれた。今後慢性感染時のCTLと機能を比較することで、リザーバー排除の行う場合の有用なCTLの候補を絞っていくことができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、慢性感染時の血液が存在しかつ抗レトロウイルス療法(ART)下の採血が可能であった18名の日本人HIV-1感染者から血液検体を収集することができた。また、それら検体を用いて13種のエピトープ(Gag TL9, Gag MI8, Gag RI8, Gag WV8, Gag NL11, Gag AA9, Pol SV9, Pol SI8, Pol LA9, Pol IT10, Pol GI8, Pol IY11, Nef MY9)に対するCTL反応を解析し、慢性感染時より減弱するものの多くの検体でCTL反応(>100 SFU / 1,000,000 PBMC)が認められることを明らかにした。また100 SFU以下であっても全く反応が認められなくなる例は少なく、ARTによってHIV-1抗原がほとんど存在しなくなったとしても数年はメモリーT細胞が残存していることが確かめられた。 一方で、CTL反応が陰性(<100 SFU / 1,000,000 PBMC)であったものでも、メモリーT細胞がわずかに残存しているのではと考え、それぞれのエピトープに対するテトラマーを作製し解析を行った。その結果、わずかではあるもののテトラマー陽性CD8+T細胞の集団が確認され、テトラマー染色の方がELISPOTよりも高い感度であることが確かめられた。そのため、今後の実験ではテトラマーを用いてメモリーT細胞の解析を行うことを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、抗レトロウイルス療法(ART)開始後数年が経っていてもHIV-1特異的メモリーT細胞が残存していることが確認された。今後は、まず最初に慢性感染時の血液が存在しかつART下の採血が可能である日本人HIV-1感染者の血液検体の収集数を、潟永博之医師(国立国際医療研究センター)の協力の下、増やしていく計画である。 その後、まずART下でCTL反応が観測された検体のPBMCをテトラマーおよびCD45RA、CD45RO、CCR5、CCR7、CD27、CD28などの細胞表面マーカー抗体で染色し、フローサイトメトリーによって表現型の解析をおこなう。これにより、ART下でも保持され続けているメモリーT細胞が主にどのようなタイプかどうかを調べる。さらに各エピトープのテトラマーに結合したメモリーT細胞をフローサイトメトリーによってSingle cell sortingをおこない、以前我々が開発したTCR解析法に基づきTCR clonotypeの解析をする。さらに慢性感染時の検体も同様にしてTCR clonotypeを解析し、ART下の結果と比較解析を試みる。その後、CTL反応が観測された感染者のCD4陽性T細胞に対しリザーバー活性化の報告のある薬剤を処理することでウイルスリバンドを再現し、リザーバーを認識・傷害することができるかどうかを解析する予定である。
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Causes of Carryover |
これまでの研究結果により、テトラマーによるエプトープ特異的T細胞の検出方法の方がELISPOTよりも感度が高いことが明らかになった。そのために13種類のエピトープのテトラマーを当初の計画よりも大量に作製する必要があり、予算を次年度に繰り越した。これにより、次年度の研究の大幅な進展が期待される。
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