2018 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルス免疫応答におけるエピジェネティック制御機構の解析
Project/Area Number |
18K16184
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
西岡 敬介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50790713)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | インフルエンザ / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスの重症化リスクファクターとして年齢、慢性疾患、糖尿病が知られている。特に生活習慣病である糖尿病はゲノムワイドなDNAメチル化ステートの変化が見られることが報告されている。一方で、喫煙や肥満といった生活習慣と関係するファクターもインフルエンザウイルスに対する感受性を変化させることから、インフルエンザウイルス感染におけるエピジェネティックステートの重要性が示唆される。そこで、同一の遺伝的背景をもつ気管支上皮細胞から樹立した不死化細胞を用いて、感染前の特定部位のエピジェネティックステートの感染への関与を検討した。感染後のインフルエンザウイルス増殖性が大きく異なる株を2株選定し、それに加え一般的に用いられるA549細胞を用いた。5-アザ-2デオキシシチジンを用いてゲノムワイドに脱メチル化を誘導すると、ウイルス増殖が抑制されることが観察された。ウイルス増殖をより抑制した細胞ではIFN-β、TNF-α産生が他の細胞株と比べ高く、これがウイルス増殖抑制の要因であると考えられた。ゲノムワイドに脱メチル化すると、解析した全細胞株で、これらサイトカイン産生の亢進が確認された。予期した通り、IFN-βは増殖抑制に大きく貢献し、脱メチル化によって誘導された産生量はウイルス増殖抑制に十分量であった。そこでIFN-β産生のシグナルパスウェイに着目し遺伝子発現解析を行ったところ、TLR3, IRF7, IL-1β, IL-6, IFN-βの遺伝子が大きく発現が異なっていた。これら遺伝子発現が大きく異なるこれら遺伝子のエピジェネティックステートが大きく異なると考えられる。 以上から、これまでに感染前のCpGメチル化ステートが季節性インフルエンザのウイルス増殖に関与することが明らかになった。今後はピックアップした遺伝子群に着目し、エピジェネティックステートの解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CpGメチル化ステートがウイルス増殖に関与することが明らかになったが、ウイルス増殖性の異なる株間における、ステートが異なる特定部位の同定には至っていない。そのため、特定部位のメチル化ステートがインフルエンザウイルス感染に関与することが未だ不明のままである。しかしながら、大きく遺伝子発現が異なる遺伝子群を同定しており、これら遺伝子群ではメチル化ステートが異なっている可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した遺伝子群のメチル化ステートの解析をバイサルファイトシークエンスにて行う。特にプロモーター部位に違いがあると考えられ標的とする。特定部位のメチル化ステートの違いの検出を行うことで、各細胞株間のエピジェネティックステートがその後のインフルエンザウイルス感染への影響の検討を行う。現在、季節性インフルエンザウイルスへの免疫応答を解析しているが、上記部分が明らかになれば、同様の手法で高病原性鳥インフルエンザへの免疫応答も解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の到達目標は、季節性インフルエンザウイルス感染に対して、特定部位におけるエピジェネティックステートの影響の検討であったが、特定部位が同定できなかった。そのため、実験予算を次年度で使用する必要が生じた。
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