2018 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージは全身の脂質代謝を制御し、肥満症治療の標的となる
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18K16200
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 哲也 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (40792346)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂質代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質代謝関連遺伝子Xをマクロファージ特異的にノックアウトしたマウスに高脂肪食を負荷したところ、オス・メス全頭において肥満を発症しなかった。肥満を発症しない機構として、現代医学で想定されるメカニズム(摂餌量低下、吸収障害、褐色細胞等によるβ酸化亢進、炎症性疾患による消耗)は否定的であった。質量分析法により血液中の脂質を網羅解析したところ、血中でトリグリセライドが著増していた。この変化は生化学的測定によっても再現的に認められた。すなわち通常の生物では余剰の脂質を脂肪組織等に蓄積し肥満するが、本ノックアウトマウスにおいては脂質が脂肪細胞等に取り込まれにくいため、肥満や脂肪肝を発症しないことが判明した。ノックアウトマウスはLysM-Cre transgeneを用いたものであり、通常はマクロファージ特異的なノックアウトを起こすが、高脂肪食を負荷した際に意図せぬ組織でノックアウトが起こる可能性を完全には排除できない。よって本ノックアウトマウスの骨髄細胞をC57BL/6Jマウスに移植し、そのマウスに高脂肪食を負荷する実験を行った。この実験においても、高脂肪食を3ヶ月間負荷してもマウスが肥満しないことが再現された。すなわち造血系細胞(この場合はほぼマクロファージと考えられる)によって、肥満が抑制されうることが証明された。現段階で本研究から示唆されることは、食事量の多寡・運動の多寡のみならず、マクロファージを操作することでも劇的に肥満を抑制できるという可能性である。肥満症が世界中で蔓延する現在、マクロファージが肥満抑制薬を開発するための新たなターゲットになることを期待させる成果だと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マクロファージによって肥満が抑制されることをほぼ確実に証明した。また本マウスにおける肥満抑制の病態生理学的メカニズムを推定し得た。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージがいかなる物質を介して肥満を抑制しているのか、またマクロファージから影響を受けて脂質取り込みが抑制されている細胞が何であるかを検討する。
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Causes of Carryover |
本年度の直接経費800,000円に対する残額2,173円は、比率にして0.27%と極めて小さな割合であり、適正・健全な予算執行の結果と考えうるものである。残額は翌年度に物品費として使用予定である。
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Research Products
(2 results)