2018 Fiscal Year Research-status Report
GLP-1の臓器保護効果の機序及び膵外受容体の生理学的役割の解明
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18K16206
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 智彰 九州大学, 大学病院, 助教 (70815894)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | GLP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病患者を対象とした大規模臨床研究にて、GLP-1受容体アナログが心血管イベントならびに腎イベント抑制作用を有することが報告された。しかしながら、臓器保護効果の機序の詳細は明らかではない。そこで本研究ではGLP-1受容体組織特異的欠損マウスを用いて詳細な機序の検討を行い、GLP-1が持ち合わせる臓器保護効果のメカニズムの解明を目指す。 本年度は、申請者らが作出したloxP配列でglp1r遺伝子のエクソン4、5を挟む、floxマウス(GLP-1r flox/flox mice)と、神経特組織特異的に発現するNestin-Creマウス及び単球系細胞特異的に発現するLysM(lysozyme M)-Creマウスとの交配によって産まれた仔のGLP-1受容体の発現をRT-PCR法で確認を行った。GLP-1R flox/flox LysM-Creマウスでは単球特異的にGLP-1受容体が欠損していること、GLP-1R flox/flox Nestin-Creマウスでは神経系特異的にGLP-1受容体が欠損していることを確認した。コントロールマウス及び組織特異的GLP-1受容体欠損マウスを18週齢まで飼育し、尿中アルブミンでの腎症の評価、ヘマトキシリン染色で心肥大の評価を行ったが、両群に差を認めなかった。血糖値、食事摂取量、体重の変化についても評価したが、両群に有意な変化は認めなかった。 今年度は、神経特組織特異的GLP-1受容体欠損マウス及び単球特異的GLP-1受容体欠損マウスの作出に成功し表現型の解析を開始できた。単球特異的GLP-1受容体欠損マウス研究報告は現在なく、神経特異的GLP-1受容体欠損マウスにおいても現在のところ心臓、腎臓に関する報告はない。今年度の研究では、コントロールマウスとの間に、表現系の変化を見いだすことはできなかったが、これらのマウスを使用して研究を進めることで独創的で新規性のある発見に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変動物の作出に成功していることが確認でき、また生理的条件での表現系の検討を行うことができた。しかしながら、遺伝子改変動物の交配や作出の確認、生理的条件での検討に時間を要し、病的ストレス負荷条件及びGLP-1受容体作動薬投与による検討を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食およびストレプトゾトシン(STZ)負荷による高血糖誘導(糖尿病モデル動物)を対照群ならびに遺伝子改変群(Nestin-Cre Glp1r flox/flox miceおよび LysM-Cre Glp1r flox/flox mice)に行う。4週から10週まで飼育し対照群、糖尿病群、遺伝子改変群、遺伝子改変+糖尿病群をさらに2群に分け、計8群(コントロールマウス+生食群、コントロールマウス+GLP-1RA群、糖尿病モデルマウス+生食群、糖尿病モデルマウス+GLP-1RA群、GLP-1R KO+生食群、GLP-1R KO+GLP-1RA群、GLP-1R KO+糖尿病+生食群、GLP-1R KO+糖尿病+GLP-1RA群)を作製する。10週齢の時点から、それぞれに生理食塩水あるいはGLP-1RAを4週間投与し、高血糖誘導及び薬剤投与による変化を評価する。 対照群ならびに遺伝子改変群の高血糖・GLP-1RA投与による変化を比較解析することにより、神経系ならびに単球のGLP-1受容体を介した臓器保護作用のメカニズムを検討できるものと考えられる。これによりGLP-1の循環ホルモンとしての機能、神経ペプチドとしての機能、単球を介した炎症制御因子としての機能を明確に区別化し、GLP-1シグナルの各臓器の生理学的、病理病態学的役割の一端が明らかになることが期待される。
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Causes of Carryover |
初年度は、申請者が所属する研究室が作出したマウスの遺伝子欠損の確認や、食事摂取量、体重の推移などの現象を中心に解析したため、消耗品などの購入が少なかった。翌年度は、マイクロアレイ、RT-PCRやウエスタンブロットなどを初めとした手法を用いて行う分子メカニズムの解明が中心となるため、消耗品の購入に助成金を使用する。
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