2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of a new differentiation conversion method to mature pancreatic beta cells by analysis of gene expression over time during differentiation process
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18K16209
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
松田 恵理子 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 特任研究員 (20815914)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダイレクトリプログラミング法 / 膵β細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイレクトリプログラミング(DR)法は体細胞からES/iPS細胞を経ずに直接目的細胞へと分化転換する方法である。ES/iPS細胞を用いた再生医療の克服課題である腫瘍化リスクを回避できることから、自立再生能を保持しない臓器・細胞の疾患の根治療法として発展が期待されている。1型糖尿病は自己免疫による膵β細胞破壊から絶対的なインスリン欠乏により発症する疾患であり根治療法としてDR法による膵β細胞分化転換の報告はされているが、生体膵β細胞のグルコース応答性を示す機能的な膵β細胞の作製には至っていない。機能的に成熟した膵β細胞への分化転換には新たな分化転換因子の探索と解析が必要である。そこで研究代表者は、膵β細胞の機能的成熟化の過程の一端を解明するため、細胞の分化段階に応じた経時的な遺伝子発現解析法の確立と、この方法により得られた知見を基に新規分化転換因子を探索し、DR法による成熟膵β細胞への分化転換法を確立するため以下7項目の検証を行なっている。 ①ES細胞から膵β細胞への分化誘導系の確立、②DR法による膵β細胞への分化誘導系の確立、③膵β細胞の発生段階に応じた特異的プロモーターを用いた発現調節アデノウイルベクターの作製、④膵β細胞の成熟に関わる遺伝子およびmiRNAの探索と解析、⑤DR法による成熟膵β細胞への分化誘導系の確立、⑥DR法により分化誘導した成熟β細胞の機能検証、⑦実験動物による成熟膵β細胞分化転換遺伝子の機能検証 今年度は、昨年度報告した経時的遺伝子発現解析に用いるACT-SCレポーター細胞の遺伝子挿入部位に選択した特定安全領域における遺伝子発現について、詳細な解析を進めた。また、膵β細胞の発生段階に応じた特異的プロモーターを用いた発現調節アデノウイルスベクターの作製も試みた。効率的な膵β細胞の経時的遺伝子発現解法の確立に向け、引き続き検証を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵β細胞の成熟に関わる遺伝子の経時的な発現解析に使用するACT-SCレポーター細胞の機能検証において、予想外の結果を得たことから、昨年度は経時的遺伝子発現解析のさらなる効率化を図るため、ACT-SCレポーター細胞の特定安全領域に挿入した遺伝子の発現について詳細な解析を進めた。また、膵β細胞の発生段階に応じた特異的プロモーターを用いた発現調節アデノウイルスベクターの作製についても試験を進めた。このように、当初の計画では予期できない結果を得たことから計画に一部変更を生じているが、分化過程の経時的遺伝子発現解析法の確立に向け、研究を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、ACT-SCレポーター細胞からの膵β細胞分化誘導系の確立と、DR法の分化誘導因子を用いた線維芽細胞からの分化誘導系の確立、また発生段階に応じた特異的プロモーターを用いた発現調節アデノウイルスベクターの作製を試み、これまでに膵β細胞の成熟に関わる遺伝子候補の探索、ならびにACT-SCレポーター細胞を用いた経時的な発現解析効率の検討を行なってきた。さらに今年度は、ACT-SCレポーター細胞の機能検証で得た予期せぬ結果をもとに、既報では十分に解析がされていない遺伝子挿入部位に選択した特定安全領域について詳細に解析を進めることが出来ている。今後も詳細に解析を進めることで、経時的遺伝子発現解析法の効率化を図ることができ、今後の再生医療における基礎研究の発展にも大きく貢献できると考える。最終的には本法を用いて膵β細胞の成熟に関わる遺伝子およびmiRNAの探索と解析を進め、DR法による成熟膵β細胞への分化誘導系の確立を試みる。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画に予定していなかった膵β細胞の経時的遺伝子発現解析に用いるACT-SCレポーター細胞の特定安全領域に挿入した遺伝子の発現について、今年度も引き続き、詳細な解析を進めた。現在までの進捗状況は、当初の予定より変更が生じているため、次年度の使用額が発生した。今年度に進めることができた詳細な解析をもとに、さらに効率的な膵β細胞の経時的遺伝子発現解析法の確立を目指し、この実験に必要な試薬等消耗品を購入する。
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