2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of Serpin gene in hypothalamic satiety regulation
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18K16210
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
大口 英臣 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (50646825)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 肥満症 / 食欲 / メタボリック症候群 / レプチン / プロテアーゼインヒビター |
Outline of Annual Research Achievements |
視床下部弓状核は末梢臓器の栄養状態を感知するエネルギー代謝情報の中枢におけるゲートウェイであり、レプチンやインスリンなどの末梢由来ホルモンに応答する細胞が存在する特殊な脳領域である。これまでにわれわれは、肥満マウスにおける視床下部のRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行うことにより、脳内では弓状核に極めて限局した発現を示し、かつ食事性肥満により弓状核のみで特異的に発現増加を示す内在性セリンプロテアーゼ阻害分子、Serpina3を同定した。本研究ではSerpinA3発現細胞を明らかにし、SerpinA3がエネルギー代謝恒常性において果たす生理的、病態生理的意義を解明することを目指して取り組んでいる。マウス脳切片を用いた免疫染色実験により、SerpinA3は視床下部においてアストロサイトやマイクログリア細胞ではなく、主としてニューロンに発現していること、特にベータエンドルフィンを発現するPOMCニューロンに発現していることを明らかにした。さらには、SerpinA3の過剰発現実験やリコンビナントタンパク質の添加実験により、SerpinA3がオートクリン的にニューロンのレプチン応答性に干渉する可能性と、マイクログリア細胞の活性化をもたらす可能性を見出した。これらの結果は、食餌性肥満により視床下部のニューロンで誘導されたSerpinA3が視床下部局所で“やせ”ホルモンであるレプチンの作用を障害し、肥満を増悪させ肥満に伴う代謝異常の原因となりうる可能性を示すものと考えられる。これまでに、CRISPR/Cas9システムによりSerpinA3をコードする遺伝子配列にflox配列を導入したノックインマウスの樹立とコロニーの繁殖に成功しており、今後はin vivoでのエネルギー代謝関連表現型の解析やその機序についての検討を重ねてゆきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス脳組織切片を用いた免疫染色実験、培養ニューロン細胞や培養マイクログリア細胞を用いた実験が予定通り実施できた。加えて、今後のコンディショナルノックアウトマウスの作製に用いるfloxマウスの繁殖に成功しており、研究の経過は概ね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はメカニズム研究とin vivoでの表現型解析の2つの研究に注力する予定である。すなわち、Tag付きSerpinA3タンパク質を用いて、ニューロンにおけるレプチン抵抗性誘導活性の評価やマイクログリア細胞活性化作用の評価を行い、Tag付きタンパク質でも再現できた場合には、Tagを用いた結合活性を指標に、古典的にはセリンプロテアーゼインヒビターと考えられてきたSerpinA3タンパク質の新しい結合パートナー分子の同定を目指す。一方で、POMCやAGRPプロモーターなど視床下部のニューロンサブポピュレーション特異的なプロモーターの下流にCREリコンビナーゼを発現するマウスとの交配により、SerpinA3コンディショナルノックアウトマウスを作製、またCAGプロモーターを用いたSerpinA3過剰発現トランスジェニックマウスを作製し、摂食量や体重、レプチン応答性を検討することでマウスの個体レベルでのエネルギー代謝制御におけるSerpinA3の役割を解明する。
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Causes of Carryover |
研究の遂行はほぼ予定通りに進んでいるが、floxマウスの繁殖に若干の遅延を生じ、genotypingのために使用する予定であった酵素などの試薬の使用が次年度に持ち越しとなってしまったため、約2万円の研究費の使用を次年度に繰り越させて頂きました。今年度に入って既にこの問題は解消しており、令和元年度については予定通りの内容で研究を遂行できるものと考えている。
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