2018 Fiscal Year Research-status Report
悪性腫瘍の発生・転移においてDPP-4が演じる分子機構の解明
Project/Area Number |
18K16214
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
高垣 雄太 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50759123)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DPP-4 / 乳癌 / 上皮間葉系細胞分化 / CXCL12/CXCR4 / mTOR |
Outline of Annual Research Achievements |
我々のグループではこれまでにDPP-4を血糖降下のターゲットとしてのみならず、膜結合タンパクとして細胞外基質と細胞内ネットワークとの相互作用を行う重要な分子であると考え研究を行ってきた。これまでの研究結果からは、DPP-4阻害は抗炎症・線維化抑制作用を介し糖尿病腎症の発症・進展抑制に寄与する可能性が示唆される。しかし、解析を進めていく中で病態・組織によりDPP-4阻害が及ぼす影響が異なることが明らかとなった。in vitroでは正常乳腺上皮・乳癌細胞においてDPP-4阻害はEMTを誘導し、またin vivoでは同種乳癌細胞移植マウスにおいてDPP-4阻害により肺転移が増加した。DPP-4はセリンプロテアーゼでありDPP-4阻害による種々の変化は、実際の生体内では膜タンパクであるDPP-4を阻害することによる直接作用以外にDPP-4の酵素活性低下により、その基質による変化の可能性もあり、実際に我々はin vitroにおいてDPP-4阻害薬投与によりDPP-4の基質であるCXCL12およびその受容体CXCR4が増加し、CXCL12/CXCR4シグナル依存的にmTORが活性化し、EMTプログラムが誘導されること、in vivoではCXCR4阻害薬投与により腫瘍サイズの縮小・転移が抑制されることを確認している。EMTは必要条件ではないが癌の浸潤・転移、化学療法への耐性獲得に関与するとされており、今回の検討ではDPP-4阻害により癌の転移・化学療法への耐性獲得が増加することが予想される。我々は金沢医科大学病院で乳癌が見出された患者のデータ、手術標本を有しており、ヒト乳がん細胞においてこれらの分子の発現に関する解析、EMTプログラムの確認に関しても院内の倫理委員会承認済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は自然発癌モデルの乳癌細胞において網羅的解析を行うことで、DPP-4阻害が癌転移に及ぼす中心シグナルの同定を予定していたが、予備的検討を行う過程でCXCL12/CXCR4シグナルを介したmTOR経路がDPP-4阻害による乳癌転移に影響を及ぼすことが明らかとなった。 その解析に日数を要したため研究計画の遂行はやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的検討で明らかになったCXCL12およびDPP-4をノックアウトした乳癌細胞を用いた解析を予定している。現在のところ同細胞を用いて、薬剤耐性に及ぼす影響に関するin vivoおよびin vitroでの解析および、mTORの薬物的阻害が乳癌転移に及ぼす影響に関するin vivoでの解析を開始しており、解析を継続する。 また、乳癌手術標本の解析も順次行う。
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Causes of Carryover |
今年度は予備的検討で明らかとなったCXCL12/CXCR4シグナルに介する解析に時間を費やした。その結果、当初予定していた自然発癌マウスモデルを使用した動物実験を行うことができず、当該年度に使用予定であった科研費の全て使用するには至らなかった。次年度は現在行なっているCXCL12/CXCR4シグナルのさらなる解析および手術標本の解析を行うとともに、本年度に予定していたが実施に至らなかった自然発癌マウスモデルにDPP-4阻害薬を投与し、発癌・転移に関する網羅的解析を行い、その調節因子を同定する解析も併せて行い、DPP-4阻害が癌の転移に及ぼす影響に関する検討のさらなる深化および新規調節因子の同定を試みるために、本年度で未使用分の研究費と次年度に請求する研究費を合わせて使用する予定である。
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Research Products
(2 results)