2019 Fiscal Year Research-status Report
乏血性環境下にある膵臓がんにおけるHNRNPMの影響
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18K16216
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
瀧野 純一 広島国際大学, 薬学部, 講師 (00440529)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵臓がん / HNRNPM / MIA PaCa-2 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国における膵臓がん患者の生存率は、極めて低い。これは、膵臓がんの早期発見が困難であることに加え、他のがんと異なり一般的に乏血性環境下(血流が乏しく酸素や栄養供給が少ない環境)でも生存可能なメカニズムを持つことに起因している。そのため、この乏血性環境耐性メカニズムに対する特効薬の開発が望まれているが、その獲得機構については未だ解明されていない。これまでに申請者は、ヘテロ核リボ核酸タンパク質の1つであるheterogeneous nuclear ribonucleoprotein M(HNRNPM)のヒト各臓器mRNA発現解析において、他の臓器と比較して膵臓で最も高発現していることを見出している。さらに、膵臓で高発現しているHNRNPMは健常人や糖尿病患者と比較してがん患者で著しく減少することも見出しており、がん化や悪性化にHNRNPMの発現減少が関与しているのではないかと考えている。そこで、本研究では乏血性環境下にある膵臓がんにおけるHNRNPMの影響を解明することで抗癌剤および早期診断マーカー開発に向けた基礎研究を行うことを目的とする。 HNRNPMをsiRNAによってノックダウンした膵臓癌細胞株MIA Paca-2は、乏血性環境を模した低グルコース条件下で細胞生存能を延長し、糖代謝を変化させることを見出した。また、HNRNPMノックダウンによって変動する遺伝子をマイクロアレイ解析およびGene Ontology解析によって明らかにした。さらに、CRISPR-Cas9システムによってHNRNPMヘテロノックアウト株を2クローン樹立し、それらの株とコントロール株のメタボローム解析によってHNRNPMヘテロノックアウトによる代謝変化を明らかにした。 今後は、HNRNPM発現減少が引き起こす影響についてマイクロアレイ解析およびメタボローム解析結果を基に解析していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、HNRNPMの一過的な発現減少ではなく長期的な発現減少による影響を観察するため、HNRNPMをターゲットとしたCRISPR-Cas9ベクターを構築し、そのノックアウト株の作製およびメタボローム解析による代謝変化を検討した。CRISPR-Cas9システムによって、HNRNPMヘテロノックアウト株を2クローン樹立することに成功し、HNRNPMノックダウンによる遺伝子変化がHNRNPMヘテロノックアウト株においても変化することを確認した。また、メタボローム解析によってHNRNPMの発現減少がグルタチオン代謝やペントースリン酸経路を変化させると示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマイクロアレイ解析およびGene Ontology解析によって得られたデータで未だ検討できていない遺伝子に対して偽陽性の確認作業を行う。次に、HNRNPMヘテロノックアウト株を用いて遺伝子およびタンパク質発現変化を解析することで膵臓がんにおけるHNRNPM発現減少が及ぼす影響を検討したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で学会参加への出張が中止となったため、次年度の学会参加への出張を予定している。
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