2019 Fiscal Year Research-status Report
グレリン受容体の結晶構造解析:なぜオクタン酸グレリンが受容体を刺激できるのか?
Project/Area Number |
18K16217
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
椎村 祐樹 久留米大学, 付置研究所, 助教 (40551297)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | グレリン受容体 / 立体構造 / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
活性型グレリンがグレリン受容体に認識される分子機構を明らかにするために、活性型グレリンが結合した状態にあるグレリン受容体の立体構造決定を行なっている。前年度行なったスクリーニングの結果、グレリン受容体の結晶化が困難であることがわかったため、1. クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造の決定および、2. グレリン受容体の安定変異体のスクリーニングを行なった。 1. クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造の決定 近年、タンパク質の立体構造を決定する手段として、X線結晶構造解析と並んで、クライオ電子顕微鏡法が活用されるようになった。クライオ電子顕微鏡法を用いて立体構造を決定するためには、グレリン受容体とGタンパク質の複合体作製が必須である。そのため、グレリン受容体と相互作用するGタンパク質サブタイプであるGqタンパク質を精製して、複合体形成を検討した。さまざまな検討の結果、Gqタンパク質の発現、精製を安定して行える環境を整えることができた。一方で、精製したGqタンパク質は、グレリン受容体と複合体を形成しなかった。 2. グレリン受容体の安定変異体のスクリーニング グレリン受容体は、非常に不安定な膜タンパク質である。そこで、発現量の増加と安定性の向上を目的として、点変異体のスクリーニングを行い、安定変異体として発現、精製することにした。安定変異体のスクリーニングは、出芽酵母を用いた系でタンパク質の発現を行い、GFPを指標としたサイズ分離クロマトグラフを用いて安定性を評価した。これまでに数百の変異体を作製したが、発現量の増加や安定性の向上した点変異体の作出には至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究の結果、X線結晶構造解析法での構造決定が困難であることが示唆されたため、クライオ電子顕微鏡法も視野に入れて、タンパク質の発現、精製を行なっている。クライオ電子顕微鏡法では、グレリン受容体とGタンパク質の複合体を形成させなければならないが、Gタンパク質の発現、精製は発現コンストラクトの選定や精製の条件検討から行わなければならなかったため、進行状況をやや遅れているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
グレリン受容体安定変異体の作出に関しては、これまでに数百の変異体を作製したが、発現量の増加や安定性の向上した点変異体の作出には至っていない。また2020年度が最終年度のため、新たに安定変異体が作出されたとしても、X線結晶構造解析法を用いた構造決定とグレリンの脂肪酸修飾の生理的な意義を明らかにするには、時間がかかると考えられる。一方で、クライオ電子顕微鏡法を用いた立体構造決定は、Gタンパク質とグレリン受容体の複合体を形成することができれば、比較的早く構造決定することができる。そのため最終年度は、クライオ電子顕微鏡法を用いた立体構造決定に注力する。 これまで、生体内でグレリン受容体が共役しているGqタンパク質の精製と複合体形成に専念してきたが、in vitroでは、Gqタンパク質以外にも、Goタンパク質との共役が報告されている。Goタンパク質は、Gタンパク質の中でも安定していると報告されているため、Gqタンパク質と並行してGoタンパク質など様々なGタンパク質の発現、精製を行い、これらとの複合体形成を目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナの影響で予定していた、1-3月の支出がほとんどなくなったため、次年度使用額が生じた。新たにGタンパク質の精製を行なっており、精製のための試薬や材料を揃えるために使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)