2019 Fiscal Year Research-status Report
RAGEとマクロファージ極性変化を標的とした糖尿病性神経障害の新規治療法の開発
Project/Area Number |
18K16220
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
遅野井 祥 弘前大学, 医学研究科, 助手 (40816261)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 糖尿病性神経障害 / AGR-RAGEシグナル / マクロファージ / 逆行性軸索輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では糖尿病性神経障害(DPN)の発症における終末糖化産物(AGE)-RAGEシグナルを介した炎症の関与を明らかとし、新たな治療法を開発することを目標としている。野生型(W)およびRAGE欠損マウス(R)を用いた検討により、前年度までに高血糖に伴うRAGEシグナルの活性化が坐骨神経(SN)にM1マクロファージの浸潤を増加させ、インスリン感受性の低下を介して脊髄後根神経節(DRG)ニューロンの萎縮、DPNの発症を促進する可能性を報告してきた。本年度はSNにおける炎症とインスリン感受性の低下がDRGニューロンの萎縮を来す機序として、逆行性軸索輸送(RAT)の障害が関与しているという仮説を立てて実験を行った。逆行性軸索トレーサーであるFluoro-Gold(FG)を用いた実験では野生型糖尿病マウス(WD)でRATの低下を認めたが、RDではRと同等に維持されていた。RATの低下率はSNにおけるM1の浸潤数と有意な相関を示しており、M1誘導性の炎症とRATの障害の関連が示唆された。RATを担うモーター分子を調節するシグナルの1つにインスリンシグナルがある。ウエスタンブロッティングによる検討では、WDにおいて炎症に伴うJNKの活性化がインスリン感受性の低下を来し、AKT-GSK3βシグナルの異常がRATの障害に関与する可能性が示唆された。In vitroではDRG由来ニューロンの培養系を用いて炎症が軸索輸送に与える影響について検討した。軸索内の酸性小胞を蛍光標識し、その運動をTime lapse imageingで撮影した。軸索を輸送される小胞の動きはTNFαの添加により有意に抑制され、TNFα-JNKシグナルの阻害剤であるSP600125の添加により抑制が解除された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RAGE欠損マウスにおいて糖尿病性神経障害の発症が抑制される機序として、マクロファージにおけるM1/M2極性の変化、炎症に伴う軸索輸送障害の改善が関与している可能性を見出した。これらの変化を担うシグナルについてもいくつかのターゲットとなる分子が見出されている。 マクロファージ以外の細胞におけるRAGE欠損の影響を排除する目的で骨髄特異的RAGE欠損マウスを作出しており、現在はその解析を行っている。DPNについては概ね全身性RAGE欠損マウスと同様の表現型を示していることが確認されている。
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Strategy for Future Research Activity |
RAGE阻害薬は副作用の点から糖尿病性合併症の治療薬とはならないことが既に証明されている。マクロファージの極性変化、TNFα-JNK経路の活性化、AKT-GSK3βシグナルの異常を含むインスリン抵抗性について治療ターゲットとなる分子を同定することを目的とする。まずは手がかりとして坐骨神経に対する網羅的遺伝子発現解析を行い、改めてシグナル変化の全容を把握することを予定している。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況により、当初2019年度に予定していた解析を2020年度に行うこととなったため。
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Research Products
(9 results)