2018 Fiscal Year Research-status Report
迷走神経シグナルによる膵β細胞増殖機構の治療応用に向けた包括的解析
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18K16221
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井泉 知仁 東北大学, 大学病院, 助教 (80747064)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膵β細胞 / 再生医療 / 自律神経 / 臓器間ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
1型糖尿病のみならず、2型糖尿病においてもインスリン分泌細胞である膵β細胞量の減少が、糖代謝異常発症の基盤となっている。そのため、減少した膵β細胞量を回復させる再生治療は、糖尿病を根治させる可能性を秘めており、その開発が強く望まれている。 本来生体は、肥満などによるインスリン抵抗性に対して、代償的に膵β細胞を増殖させることによってインスリン需要の増大に適応することが知られており、この代償機構が正常に働かなくなると糖尿病を発症すると考えることができる。申請者の所属する研究グループでは、この代償機構を解明することで、新規の膵β細胞再生治療の開発につながると考え研究を進めた結果、肝臓-中枢神経-膵β細胞の臓器間神経ネットワークによる膵β細胞増殖機構を発見した(Science 2008)。これは、肥満に伴う肝臓のextracellular-signal regulated kinase(ERK)経路の活性化が発端となり、肝臓-内臓神経求心路-中枢神経―迷走神経遠心路-膵β細胞という神経経路により、膵臓内で膵β細胞特異的な増殖が誘導されるという機構である。さらに、この臓器間ネットワークの活性化が、膵β細胞減少モデルマウスの膵β細胞量を増加させ、糖代謝異常を改善させることを示し、治療応用への高い可能性を示した(Science 2008)。さらに申請者らはこのネットワーク機構の詳細、とくに再生治療に直結すると考えられる、迷走神経遠心路からのシグナルが膵β細胞増殖を誘導する分子メカニズムの解明について検討を進めた結果、迷走神経由来因子であるアセチルコリン、PACAP、VIPといった因子が直接的に膵β細胞に作用して増殖を誘導することを見出した(Nature Communications 2017)。現在治療への応用を見据えて、ヒト膵島や老化した膵β細胞に対する増殖誘導効果を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
迷走神経由来因子による膵β細胞増殖誘導における、膵β細胞内の詳細なシグナル解析については、あるターゲットについて有望な結果を得た。また高齢マウスに対しても臓器間ネットワーク活性化や迷走神経由来因子の直接作用による膵β細胞増殖効果を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、次年度は迷走神経由来因子に反応する膵β細胞のシグナル経路の解析を継続する。また高齢マウスに対する増殖誘導の詳細なメカニズムの検討を進める。ヒト膵島への効果についても評価を行う。
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Research Products
(4 results)