2018 Fiscal Year Research-status Report
レプチンシグナルを介する新たなメカニズムを持つインスリン依存性糖尿病治療薬の開発
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18K16225
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 禎浩 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80637687)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1型糖尿病 / レプチン / インスリン依存性糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
Protein Tyrosine phosphatase-1B(PTP1B)は、レプチンシグナルを阻害する酵素であり、PTP1B欠損下ではレプチンシグナルが亢進する。本研究の目的は、PTP1Bの欠損もしくは抗PTP1B薬による内因性レプチンシグナルの亢進により、インスリン依存性糖尿病(IDDM)マウスにおいてインスリンシグナルとは独立をして糖代謝を改善する可能性及びメカニズムを明らかにすることである。野生型マウス(WT)およびPTP1B欠損マウス(KO)にストレプトゾシン(STZ)を投与してIDDMを作成後、浸透圧ポンプを用いてレプチン0.25μg/日もしくは20μg/日を皮下へ持続投与した群、レプチン0.25μg/日を脳室内へ持続投与した群それぞれにおいて投与後12日間、各dark cycle終了時の血糖値を測定し群間内で比較検討した。 結果、IDDM KOは、レプチン20μg/日の皮下投与群およびレプチン0.25μg/日の脳室内投与群ともにIDDM WTと比較して有意な血糖値の改善を認め、STZ非投与のWTと同等のレベルまで改善した。また、レプチン0.25μg/日の皮下投与はIDDM KOおよびIDDM WTともに血糖値の改善を認めなかった。このことより、レプチン投与において、IDDM KOでは外因性のレプチン作用が増強し、インスリンシグナルとは独立して糖代謝を改善する可能性が示唆された。また、脳室内投与群は、皮下投与では高血糖改善に効果のない少量にて改善効果を得たことより、IDDM KOにおけるレプチンの血糖降下作用は中枢を介している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画であるレプチン脳室内投与による血糖降下作用の検討において、脳室内投与群は、皮下投与では高血糖改善に効果のない少量にて改善効果を得たことより、IDDM KOにおけるレプチンの血糖降下作用は中枢を介している可能性が示唆されたことを証明した。このことから当初遂行する予定であった計画は概ね順調に進展していると考えられた。しかしながら中枢での作用機序を判明するために摂食調節ペプタイド特異的にPTP1Bを欠損したマウスを使用して同様の実験を予定しているが、マウスの作成が当初よりは遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下の実験を予定している。 ①抗PTP1B薬使用による血糖降下作用の検討 IDDM マウスに、抗PTP1B 薬を投与して、非投与群との血糖降下作用を比較検討する。次に抗PTP1B薬による血糖降下作用が十分ではない場合は、レプチンを併用して検討する。これらのことから、抗PTP1B薬単独もしくはレプチン併用によりIDDMを治療できる可能性を明らかにしていく。 ②PTP1B欠損及び抗PTP1B薬による末梢臓器への糖の取り込みの評価 PTP1B欠損及び抗PTP1B薬によるIDDMマウスへの血糖値を改善するメカニズムは明らかになっていない。先行研究よりIDDM KOマウスは、GTTにて耐糖能の改善を認めたことより、末梢臓器(褐色脂肪細胞、筋肉など)への糖の取り込みが改善したと考えられる。そこで私たちは、研究で使用したマウスに2DGを腹腔内投与し、速やかに臓器を摘出し測定キットを用いて末梢臓器へ糖の取り込みを比較検討することで、メカニズムを明らかにしていく。
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