2019 Fiscal Year Research-status Report
レプチンシグナルを介する新たなメカニズムを持つインスリン依存性糖尿病治療薬の開発
Project/Area Number |
18K16225
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 禎浩 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (80637687)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1型糖尿病 / レプチン / PTP1B / IDDM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、PTP1Bの欠損もしくは抗PTP1B薬による内因性レプチンシグナルの亢進により、インスリン依存性糖尿病モデル(以下IDDM)マウスにおいてインスリンシグナルとは独立をして糖代謝を改善する可能性及びメカニズムを明らかにすることである。昨年度は、末梢及び中枢からのレプチン投与において、IDDM PTP1B欠損マウス(KO)では外因性のレプチン作用が増強し、インスリンシグナルとは独立して糖代謝を改善する可能性を示した。また、レプチン脳室内投与群は、末梢投与では高血糖改善に効果のない少量にて糖代謝改善効果を得たことより、IDDM KOにおけるレプチンの血糖降下作用は中枢を介している可能性を示した。 令和元年度は糖代謝を改善するレプチン作用へのPTP1Bの寄与を調べるため、IDDMマウスに抗PTP1B薬を投与する実験をおこなった。IDDMマウスにレプチン及び抗PTP1B薬を単独で投与した群では血糖値の十分な改善を認めなかった。このためレプチンを末梢から投与した群に抗PTP1B薬を併用投与した群(以下lep+PTP1Bi群)において糖代謝の検討を行った。結果、lep+PTP1Bi群は野生型マウスと有意差なく血糖値を改善し、ブドウ糖負荷試験(GTT)においても有意差なく糖代謝を改善したことを確認した。このことより抗PTP1B薬とレプチンを併用投与することによりIDDM治療への可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.レプチン脳室内投与による血糖降下作用の検討において、脳室内投与群は、皮下投与では高血糖改善に効果のない少量にて改善効果を得たことより、IDDM KOにおけるレプチンの血糖降下作用は中枢を介している可能性を示唆されたこと。 2.抗PTP1B薬とレプチンを末梢より併用投与した結果IDDMマウスにおいて糖代謝を改善した。このことから当初遂行する予定であった計画は概ね順調に進展していると考えられた。 今後は中枢での作用機序を判明するために摂食調節ペプタイド特異的にPTP1Bを欠損したマウスを使用して同様の実験を予定しているが、マウスの作成が当初よりは遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画調書に沿って以下の実験を予定している。 IDDMマウスにおけるレプチンシグナルの増強による血糖改善のメカニズムを解明していくために、視床下部のPOMC ニューロンに着目をした。私たちは、これまでにCre-lox システムを用いてPOMCニューロン特異的にPTP1B を欠損したマウス(POMC KO)を作成した結果、肥満抵抗性を来したことを報告した。このように、POMC ニューロンにおけるPTP1B の役割は、レプチンシグナルに強い関与を持っていることが知られている。このため、IDDM POMC KO マウスを作成し、野生型マウス及びPTP1B全身欠損マウスと糖代謝を比較検討を行う予定である。このことから、PTP1B の中枢レプチン作用を増強してIDDMマウスの糖代謝を改善するメカニズムにどの程度POMCニューロンが関与しているかを明らかにしていく。
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