2019 Fiscal Year Research-status Report
GPIアンカー特異的切断酵素;GPI-PLDの生理病態学的意義の解明
Project/Area Number |
18K16229
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤島 裕也 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10779789)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | GPI-PLD / XOR / 脂肪肝 / 肥満症 / 2型糖尿病 / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
1)GPI-PLDによる糖代謝、脂質代謝調節機構の解明 GPI-PLD遺伝子発現は肝臓で高発現しており、db/dbマウスやSTZ(streptozotocin)を負荷した糖尿病病態マウスでは、その肝臓での遺伝子発現と血中濃度が有意に上昇していた。また、GPI-PLD欠損マウス(GP-KO)では、WTに比較して、高脂肪高蔗糖食負荷による耐糖能障害、脂肪肝の進展が顕著に抑制されていた。さらに、GP-KOでは肝DAG蓄積ならびに、PKCε活性化の有意な抑制が認められた。続いて、ラット肝初代培養細胞を用いたin vitroの検討を行ったところ、細胞内DAG含量はsiRNAによるGPI-PLDのノックダウンにより減少した。一方で、アデノウイルスによる過剰発現では、特にGPIの生合成に関わる脂肪酸側鎖であるアラキドン酸添加時に、顕著なDAGの増加とPKCε活性化を認めた。また、ヒトの臨床検体(当院外来通院中の男性患者88名)においても、血中GPI-PLD濃度は血中TG値やALT値と有意な正相関を示した。以上より、GPI-PLDは肝DAG量を直接的に変化させることで脂肪肝進展やインスリン抵抗性に関与する可能性があることが示された(Am J Physiol Endocrinol Metab 2019)。 2)キサンチン酸化還元酵素(XOR)の病態学的意義と、代謝・血管病への影響 XOR はヒトでは主に肝臓や小腸で高発現している。2型糖尿病患者の臨床検体を用いた血中XOR活性の測定を行った結果、その独立した規定因子は血中AST値のみであった。そこで、コリン欠乏メチオニン減量高脂肪食を負荷し、NASHモデルマウスを作製したところ、血中XOR活性は経時的に顕著な上昇を認め、特に活性酸素種(ROS)のソースとなるXOのフォームが増加していた。これらの結果から、NAFLDやNASHといった病態では、肝細胞が破壊され逸脱することにより、XOを主体とした高XOR活性血症を来すと考えられ、メタボリックシンドロームや動脈硬化性心血管疾患の進展を惹起させる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に大きな問題もなく、マウスならびに細胞実験も当初の計画通り順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
コリン欠乏メチオニン減量高脂肪食負荷・NASHモデルマウスを用いて、肝疾患に伴う血中高XOR活性が全身の代謝や動脈硬化症進展に及ぼす影響を、主に基礎研究により明らかとする。 NASHモデルマウスにおける、血中でのプリン代謝の変化、大動脈のVCAM-1やMCP-1といった動脈硬化や炎症に関連する各種遺伝子発現の変化および、頸動脈結紮に伴う新生内膜増殖の変化を評価する。また、上記マウスへのXOR阻害剤(Topiroxostat)の投与による改善効果について検討する。 ヒト肝由来S9分画では高いXOR活性を示すことを確認している。このS9分画や精製XORを、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に添加した際の、培養上清中のプリン代謝物や各種遺伝子発現の変化ならびに、ROSの産生について検討する。また、XOR阻害剤による影響を評価する。
|
Causes of Carryover |
研究は順調に進展しているが、現在本学医学部動物実験施設の老朽化に伴う改装工事のため、動物実験の規模が全学的に縮小しており、また研究費に端数が生じたので次年度に繰り越して使用する。
|