2019 Fiscal Year Research-status Report
RAGEによる視床下部の炎症調節機構とそれに伴う摂食、代謝への影響の解明
Project/Area Number |
18K16248
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
小西 康輔 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (90532367)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RAGE / esRAGE / 視床下部炎症 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者では心筋梗塞、脳梗塞などの血管合併症が予後に大きく影響する。持続する高血糖が血管合併症の病因に深く関与することが推定されているが、その分子機序は明らかではない。本研究では、高血糖による細胞障害(糖毒性)にかかわる血管内皮の受容体receptor for advanced glycation endproducts (RAGE)が血管内皮の炎症を惹起し、またその炎症はRAGEの切断が誘導されるネガティブフィードバック系が存在すること、さらにその分子機序を初めて明らかにした。FASEB J. 2019 Mar;33(3):3575-3589. 上記研究ではアデノウイルスを用いた血管内皮へのRAGEの過剰発現により、炎症性サイトカインtumor necrosis factor-α(TNF-α)による炎症シグナルは亢進し、炎症機転が増幅された。一方血管内皮特異的にRAGEを過剰発現したトランスジェニックマウスにおいて、TNF-αなどによる炎症誘導は、RAGEの切断(shedding)を誘導した。TNF-αによるRAGE sheddingはJNK活性化によるマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)9と、小胞体ストレスにかかわるactivation transcription factor(ATF)4によるADAM10誘導により引き起こされることが明らかとなった。これらの結果は、持続する高血糖刺激が血管炎症を惹起し血管合併症発症に関与すること、さらに血管の炎症増幅がRAGE切断・放出により高血糖と炎症の悪循環にブレーキをかける仕組みが存在することとその詳細なメカニズムを示した成果で、極めて重要な知見と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験群の作成(遺伝子的にホモのマウスの抽出)、系統維持に関しては順調に行えている。 ①RAGE Tg/Tgマウスにおける高脂肪食負荷時の視床下部炎症の評価 野生型またはRAGE Tg/Tgマウスを通常食または高脂肪食により既報に基づいて飼育し (Monden M, Koyama H, et al: Diabetes 62: 478-489, 2013)、摂餌量、体重の測定と、PFA灌流固定後に脳組織を採取し、弓状核を中心とした視床下部領域の免疫組織学的解析を行った。免疫組織学的解析として、まず、視床下部領域におけるミクログリア(Iba1)の活性化を評価した。血管内皮にRAGEを過剰発現させたRAGE Tg/Tgマウスでは、野生型マウスと比較し、高脂肪食負荷による視床下部の炎症(ミクログリアの活性化)が抑制されていることを確認できた。体重及び、摂餌量に関しては、現段階では統計学的解析は行えていない。また、マウスの脳を採取した際に、視床下部を分離し、脳全体あるいは視床下部でのTNFαやIL-6といった炎症性サイトカインの上昇に差がないか解析を行っている。 ②RAGE-/-マウスにおける高脂肪食負荷時の視床下部炎症の評価 RAGE発現のないRAGE-/-マウスを用いて、①と同様の高脂肪食負荷による視床下部炎症惹起に対するRAGEの影響を検討した。免疫組織学的解析として、まず、視床下部領域におけるミクログリア(Iba1)の活性化を評価した。RAGE-/-マウスでは、野生型マウスと比較し、高脂肪食負荷による視床下部の炎症(ミクログリアの活性化)が抑制されていることを見出した。上記のマウスと同様にマウスの脳を採取した際に、視床下部を分離し、脳全体あるいは視床下部でのTNFαやIL-6といった炎症性サイトカインの上昇に差がないか解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
RAGE Tg/Tgマウス及び、RAGE-/-マウスにおいて、野生型と比較した際の摂餌量、体重の推移に関する統計学的解析ができていないため、実験群を増やし、データを収集していく。また、免疫組織学的解析では、両モデルマウスにおいて、野生型と比較しミクログリアの活性化に差を認めているので、脳全体あるいは視床下部でのTNFαやIL-6といった炎症性サイトカインの上昇に差がないか解析を行っている。また、フローサイトメトリーにより、①ミクログリアの極性の変化、②視床下部の血管内皮細胞あるいはBBBにおけるRAGE発現の変化を評価し、RAGEの脳内炎症への関与の機序をより明確にしていく。さらに、摂食にかかわるPOMC、AgRPニューロンについても検討することで、RAGEによる視床下部炎症の調節と摂食の関連性を検討していく予定である。
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