2019 Fiscal Year Research-status Report
抗癌剤耐性トランスポーターABCB1の薬剤排出メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K16251
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 恵 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (60817378)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ABCB1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCB1は癌細胞に過剰発現するトランスポーターであり、ABCB1は抗癌剤を細胞内から細胞外へ排出することで、多剤耐性の一因となっている。しかしながら、その輸送に関する詳細なメカニズムは現在までに明らかになっていない。本研究では、ABCB1の基質結合部位の4つのアミノ酸(F728/F978/Y310/Y953)に注目し、そのアミノ酸の変異がトランスポート機能に与える影響について解析することを目的とした。これまでに、4つのアミノ酸全ての変異(以下SM 変異と示す)においてABCB1の蛍光基質のトランスポート機能を抑制することが判明した。また、2つのフェニルアラニンの変異(F728/F978:以下FF 変異と示す)の場合でも同等の結果が得られた。以上のことから、4つのアミノ酸全ての変異、少なくとも2つのフェニルアラニンの変異がABCB1のトランスポーター機能に影響をもたらすことが明らかとなった。続いて、これら2種の変異がATPase活性に与える影響を調べるため、ATPaseアッセイを行った。本来の野生型ABCB1 (Wildtype:以下WTと示す) は基質によってATPase活性が促進されるが、SMまたはFF変異においては基質によるATPase活性の促進は認められなかった。また、SM、FF変異の基質結合部位を評価するために放射活性を持つABCB1の基質であるIAAPを用いてIAAP結合アッセイを行った。その結果、IAAPはWTと同等にSMとFF変異の基質結合部位に結合することが判明した。以上の結果より、SM、FFというアミノ酸の変異によってABCB1の基質結合部位への基質の結合は影響を受けないが、これらの変異がABCB1のATP加水分解に影響を及ぼすことが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、当初予定していたトランスポート機能解析、ATPaseアッセイ、IAAPアッセイが概ね終了した。結果として、4つのアミノ酸全ての変異、少なくとも2つのフェニルアラニンの変異がABCB1のトランスポーター機能を抑制することが明らかとなり、その機序としては、これらの変異がABCB1のATPase活性を抑制することが関与していると考えられた。今後も検討する基質の種類を追加し検討する必要があるが、順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSMまたはFF変異と基質である薬物のin silico解析を行い、変異がどのように薬物のトランスポートに作用して抑制を示すのか、機序を明らかにする。その後、結果を総合的に解析して論文作成を進めていく予定である。
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