2018 Fiscal Year Research-status Report
神経芽腫のがん微小環境における免疫抑制解除を目指したNKT細胞免疫療法の開発研究
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18K16274
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
原田 和明 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (00748767)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 免疫抑制 / 神経芽腫 / NKT細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、神経芽腫が有する抗腫瘍免疫に対する抑制効果の作用機序解明と、免疫抑制状態の打破を目指したNKT細胞免疫療法の有用性を明らかとすることを目的とする。 平成30年度は、神経芽腫腫瘍環境による樹状細胞(DC)を介した免疫抑制効果の検討と、神経芽腫細胞株によって産生される抗腫瘍免疫抑制作用を有する可溶性因子の探索を行なった。単球由来DCの分化誘導系に神経芽腫細胞株(NLF、GOTO)の培養上清を加えると、本来発現が消失するCD14分子の発現持続と、発現が亢進するCD1a分子の発現抑制が認められた。また、DC上の活性化補助シグナル分子CD40、CD83、CD86の発現低下を認め、抑制性補助シグナル分子PD-L1の発現上昇を認めた。さらに、成熟化刺激を受けたDCによるIL-12、TNF-α産生能が劇的に低下した。また、本培養系にて誘導したαGalCerパルスDCによるNKT細胞刺激後のIFN-γ産生量を比較すると、NLFの培養上清を添加したDCにて減少した。これらの結果から、神経芽腫における腫瘍微小環境では、DCの機能が抑制され、NKT細胞免疫系による抗腫瘍免疫応答が阻害されている可能性が示唆された。 次に、神経芽腫細胞株の培養上清に含まれる抑制因子の解析のために、上清中に含まれる炎症性サイトカイン(IL-1β, IL-6, TNF-α)と抑制性サイトカイン(IL-10, TGF-β1)について測定したが、検出感度以下であった。一方、単球由来DCの培養開始24時間後の上清に含まれるサイトカインの測定では、NLFとGOTOの培養上清を添加した系でIL-6とIL-10の上昇が認められた。IL-6、IL-10は神経芽腫培養株の培養上清には含まれていないため、単球から産生されたサイトカインと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In vitroでの実験は概ね順調に進んでいる。一方、免疫不全マウスであるNOD/SCID/IL2Rγ-/-(NOG)マウスによる神経芽腫モデルの作成に関しては、NKT細胞免疫系による抗腫瘍効果の評価法について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
神経芽腫細胞株によって産生される抗腫瘍免疫抑制作用を有する可溶性因子については同定することができなかったため、単球由来樹状細胞の分化を阻害するメカニズムおよびサイトカイン産生抑制機構について、RNA-sequenceを用いた網羅的遺伝子発現解析を行っていく。コントロールとして、腫瘍細胞培養上清を添加せずに誘導した樹状細胞もしくはIL-12産生抑制を誘導しない神経芽腫細胞株の培養上清を添加して誘導した樹状細胞を用い、培養上清添加によって特異的に変動する遺伝子群をReal-time PCRにて確認し、FACSを用いてタンパク発現を解析する。さらに、RNA-sequenceの結果を踏まえ、遺伝子のノックダウンやノックアウト、遺伝子導入をして抗腫瘍免疫抑制に関わる遺伝子やタンパクの同定を進めていく。また、同定された分子の阻害実験にて、IL-12産生能やNKT細胞活性化能の回復が得られるかを検討する。 In vivoにおいては、NOGマウスに対して、神経芽腫細胞株を皮下注射または静脈内注射を行い、NKT細胞免疫系によって活性増強されたNK細胞を投与し、抗腫瘍効果を検討する。さらに、治療後の腫瘍組織を用いて、免疫染色やフローサイトメトリーを用いてNK細胞の浸潤の程度を評価する。これらにより、神経芽腫細胞株に対するNKT細胞療法の抗腫瘍効果発揮のメカニズムを解明することを目標とする。
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Causes of Carryover |
本年度では、単球由来樹状細胞の分化を阻害するメカニズムおよびサイトカイン産生抑制機構についての研究が完了できなかった。そのため次年度はRNA-sequenceを用いた網羅的遺伝子発現解析と、その結果から神経芽腫腫瘍環境における免疫抑制に関わる遺伝子の候補をあげ、それらの遺伝子のノックダウンや遺伝子導入による実験に対して、使用予定である。 In vivoにおける実験では、NOGマウスの追加購入に使用予定である。
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Research Products
(1 results)