2018 Fiscal Year Research-status Report
抗原性を消失させた膵島細胞シート移植による免疫寛容導入の試み
Project/Area Number |
18K16282
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大野 慎一郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90567174)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵島移植 / CRISPER/CAS9 / MHC class1 抑制 / FACS / 免疫寛容 / HepG2 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは間葉系細胞をシート化し膵島と培養、膵島細胞シートを皮下へ移植し膵島単独移植時より機能維持、生着することを報告している。本研究ではCRISPR/Cas9システムによりMHC class Iを構成する分子であるβ2ミクログロブリン遺伝子を欠失するように膵島細胞に対して遺伝子編集を行い、MHC class Iの発現を抑制し宿主のT細胞から認識出来なくし拒絶反応を軽減することを目的としている。研究代表者らは腫瘍免疫を利用した癌治療において同手法でT細胞への遺伝子導入、MHC class Iの発現抑制およびin vitroでのアロ反応抑制を確認しているが、非血液系細胞では実験手法が確立出来ていない。ヒト膵島細胞は資源が限られるため、まずは汎用的な非血液系細胞株である肝癌細胞株HepG2を用いて実験系の確立を行った。まず、HepG2を培養しレンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行った。FACSでMHC class Iの表出を確認、25-29%の細胞で陰性化を認めた。更に純粋なMHC class I陰性分画を得る目的で磁気ビーズ分離法を行い、MHC class I陰性の細胞を96%の純度で得られた。以上より、非血液系細胞でも遺伝子導入によるMHC class Iの抑制および高純度のMHC class I抑制細胞の細胞を分離出来た。次いでアルバータ大学からヒト膵島細胞を輸入、状態が良好な膵島を顕微鏡下に採取、トリプシン処理にて単細胞化後、HepG2に行った同様の方法で遺伝子導入を試みた。FACSで遺伝子導入前後でMHC class Iの発現割合の変化を確認しようとしたが、MHC class I陰性分画が多く、明確な変化を認めなかった。外分泌腺及び死細胞の混入が多いことが原因と考えられたため、今後は膵島細胞を特異的に認識する抗体を使用し予め磁気ビーズ細胞分離法で分離を行った後に遺伝子導入を再度試みる予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者らは腫瘍免疫を利用した癌治療において同手法でT細胞への遺伝子導入、MHC class Iの発現抑制およびin vitroでのアロ反応抑制を確認しているが、非血液系細胞では実験手法が確立出来ていない。ヒト膵島細胞は資源が限られるため、まずは汎用的な非血液系細胞株である肝癌細胞株HepG2を用いて実験系の確立を行った。まず、HepG2を培養しレンチウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行った。FACSでMHC class Iの表出を確認、25-29%の細胞で陰性化を認めた。更に純粋なMHC class I陰性分画を得る目的で磁気ビーズ分離法を行い、MHC class I陰性の細胞を96%の純度で得られた。以上より、非血液系細胞でも遺伝子導入によるMHC class Iの抑制および高純度のMHC class I抑制細胞の細胞を分離出来た。次いでアルバータ大学からヒト膵島細胞を輸入、状態が良好な膵島を顕微鏡下に採取、トリプシン処理にて単細胞化後、HepG2に行った同様の方法で遺伝子導入を試みた。FACSで遺伝子導入前後でMHC class Iの発現割合の変化を確認しようとしたが、MHC class I陰性分画が多く、明確な変化を認めなかった。外分泌腺及び死細胞の混入が多いことが原因と考えられたため、今後は膵島細胞を特異的に認識する抗体を使用し予め磁気ビーズ細胞分離法で分離を行った後に遺伝子導入を再度試みる予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
HepG2のMHC class I抑制分画に対して他己リンパ球共培養試験を行いin vitroでのアロ反応抑制を確認する。更にヒトリンパ球を輸注したNOGマウスへの移植実験を行いin vivoでのアロ反応抑制を確認する。さらにMHC class Iの発現抑制により、これを認識できなくなったナチュラルキラー細胞による細胞傷害が予測されるため、回避するためにβ2ミクログロブリン-HLA-E融合遺伝子のレトロウイルスベクターでの導入を行い、さらなる拒絶反応の抑制を目指す。膵島細胞においては、特異的に染色出来るAnti-HPi2抗体を用いて膵島細胞の分離を行いHepG2に準じて遺伝子導入およびアロ反応抑制をin vitro, vivoで確認していく。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画より、HepG2の実験が主となり、膵島細胞実験が遅れてしまい、β細胞を特異的に認識する抗体購入を見送った為、計画に遅れが生じた。 今後は膵島細胞を特異的に認識する抗体を使用し、磁気ビーズ細胞分離法で分離を行った後、遺伝子導入実験に必要な抗体や試薬等購入に充てる予定である。
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